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高等植物のミトコンドリアは頻繁に融合と分裂を繰り返している研究成果

高等植物のミトコンドリアは頻繁に融合と分裂を繰り返している

 真核生物において,ミトコンドリアはエネルギーを生産するために必要不可欠な細胞小器官です。植物ではミトコンドリアの数が多く(タマネギではひとつの細胞内に約15,000個ある),ミトコンドリアの融合が実際に起こっているのかどうか不明でした。今回わたしたちは,高等植物の細胞内でミトコンドリアが極めて高頻度に融合分裂を繰り返して相互に内容物を交換しあっていることを,非常にユニークな方法を使って証明することに成功しました。

 実験には蛍光タンパク質“カエデ”という,蛍光を緑色から赤色に変化させることができるタンパク質(2002年理研脳科学研究センターのグループが発見 PNAS99:12651-12656)を用いて,ミトコンドリアを可視化しました。このカエデタンパク質をタマネギの細胞内のミトコンドリアへ送り込み,ひとつの細胞内のミトコンドリアの半数を緑,残り半数を赤の蛍光を持つように変化させました。すると緑と赤のミトコンドリアは隣り合った後に融合を起こし内容物を交換しあい,黄色(黄色は緑色と赤色が混ざった色)に変化しました。さらに,約1万5千個のミトコンドリアは融合と分裂を繰り返し,わずか2時間以内にすべてが均一な黄色に変化しました。比較対照として別の細胞小器官である色素体(葉緑体の一種)やペルオキシソームでも同様の実験を行いましたが,このような現象は検出されませんでした。

 ミトコンドリアは,独自のゲノムを持っていますが,植物ではそれぞれのミトコンドリアが持つ遺伝子の数に差があるといわれていました。このような頻繁な内容物の交換によって,それぞれのミトコンドリアの持つ遺伝子産物の均質化を図っている可能性が示唆されました。

 本研究は,融合現象の証明方法自体が技術的にエレガントであると賞賛され,またその結果がわかりやすくクリアであるため,(実際にミトコンドリアが融合する瞬間の動画,連続写真があります。)高い評価を得ています。今後この研究結果は植物の細胞質遺伝のメカニズムの解明やミトコンドリアゲノムの形質転換への応用につながる可能性があります。

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