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熱帯降雨観測衛星データからの降雨要因推定研究成果

熱帯降雨観測衛星データからの降雨要因推定

東京大学気候システム研究センター: 高薮 縁・住 明正・中島映至

  雨はその要因(梅雨、低気圧活動に伴う雨、夕立、台風等)によって降り方が異なる。雨量測定の歴史は非常に古く、東京で年間約1500mmの雨が降るというような知識は豊富にある。しかし実は、その1500mmの雨がいかなる要因で降るかという内訳を把握するのは困難である。
  同じ量の雨でも、集中的にザーッと降るかしとしとと長い持間降るかによって、農作物や河川への影響は全く違う。気候変化に伴う社会影響を適切に論じようとするならば、気候モデルも要因別の降雨特性と降雨量を正しく表現する必要がある。東京大学気候システム研究センター(センター長:中島映至)の高薮と片山(*現所属:日本気象協会)は、熱帯降雨観測計画(TRMM)衛星に搭載された降雨レーダー(宇宙航空研究開発機構・情報通信研究機構の開発)データを利用して約300km四方の領域毎の主な降雨要因(タイプ)を動的に特定する手法を世界で初めて開発した。図は、陸上5タイプ(夕立、浅い雨、温帯低気圧活動、組織化した雲システム、高地性)、海上3タイプ(浅い雨、温帯低気圧活動、組織化した雲システム)に分けた例である。この手法はTRMM降雨レーダーが雨の3次元構造を捉える特長を生かし、対流性のザーザー雨と層状性のしとしと雨の割合や、降雨頂の高度に関する情報を統計的に利用して初めて可能になった。
  この成果は、今後気候モデルの検証(人・自然・地球共生プロジェクト、環境省地球環境研究総合推進費)、および降雨量推定の高精度化(戦略的創造研究)に利用される計画である。このような降雨要因データを作成できる観測は、現在、TRMM降雨レーダー以外に存在しない。また、降雨特性の経年変化を論じるためには10年程度のデータ取得により気候値を求めることが必須である。
  すでに報道されているように、現在、NASAの資金不足を理由としてTRMMの運用が今月末にも停止されようとしている。私たちの生活に直接かかわる水循環のしくみを解明する上で、現時点でのTRMM観測停止は大きな痛手であり、日本側からの資金支援も含め、国際的な支援によるTRMM衛星の観測継続の実現が重要である。



経緯度2.5度の格子で3ヶ月ごとに特定した卓越降雨タイプ分類の図

図:緯経度2.5度の格子で3ヶ月ごとに特定した卓越降雨タイプ分類。上図は1998年6-8月、下図は1998年12月-99年2月。(カラーバーは、赤:夕立、緑:(薄)陸域(濃)海域の浅い雨、黄とオレンジ:陸上海上の温帯低気圧活動の雨、青:組織化した雨、ワイン:高地の雨)

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