PRESS RELEASES

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東京大学工学系研究科・工学部第10回記者会見研究成果

東京大学工学系研究科・工学部第10回記者会見

プログラム:

(1)「広報誌T time!第2号発行について」

堀井 秀之 教授 工学系研究科広報室長

  広報室では、今年度から、東京大学工学部の活動を広く一般の方々に知って頂くために、広報誌T time!を発行している。9月6日発行の第2号では、「工学研究をリードする女性たち」というテーマで、学部と大学院に在学する4人の学生(うち3人が女子)が、水流聡子助教授(化学システム工学科)、野崎京子教授(化学生命工学科)、小林由佳助手(化学生命工学科)にインタビューしている。まだまだ、工学というと女性には敷居が高い世界と思われがちではないかと思うが、工学部で活躍する女性研究者・教育者の、妊娠や子育て・出産と研究の両立、また、研究者としての女性の長所などについての話を、進路を考える若い人たちにぜひ読んで頂きたい。


(2)システム量子工学専攻、物理工学専攻における最近の研究紹介

「蛍光X線分析等のための高エネルギー分解能超伝導体センサー」

高橋 浩之 助教授 (システム量子工学専攻)

  次世代のX線天体観測や非破壊検査法である蛍光X線分析では、エネルギー分解能の非常に高いX線センサーが求められている。私たちの研究室では、蛍光X線分析等の応用をめざし、X線エネルギーを熱に変換して温度計で検出するマイクロカロリメータというタイプの検出器の開発に取り組んでいる。私たちが開発したセンサーはナノテク技術によりイリジウム超伝導体の超伝導-常伝導遷移を利用して高感度かつ高速に動作するもので、従来用いられていた半導体検出器の10倍以上の分解能を有するとともに、イメージングの能力を併せ持つ世界で唯一の検出器となっており、微量元素分析をはじめ、宇宙空間での活動銀河団の状態やガスの大規模な衝突現象などの解明にも役立つと期待されている。
  さらに、このような成果が国際的にも高く評価され、来年の7月31日?8月5日までの期間、「第11回低温検出器に関する国際会議(LTD-11)」が東京大学武田先端知ビルで開催されることになり、我々の研究室が産業技術総合研究所、宇宙航空研究開発機構とともに主催する。世界から百を超える研究グループが参加し、活発な議論がかわされる予定である。


「第3回日中物質・材料・分子設計シンポジウム?設計科学と先見的工学の地平?」

陳 迎 助教授 (システム量子工学専攻)

  平成16年10月24日?26日の3日間、東京大学山上会館において、顧秉林清華大学学長、小宮山宏東京大学副学長、平尾公彦工学系研究科長他、日中を中心に当該分野の有力な研究者を招き、物質・材料・分子設計分野の過去の約半世紀に及ぶ研究開発、失敗と成功を総括する。世界各国の大学、研究所、産業界等に分散する研究者、技術者が、人間の生活の基盤となる素材に関する"知"を、国境、組織、知財権等の法制度、技術標準等の様々なカベ、コンフリクトを超えて集約し、全人類にとっての公共財、知的基盤として確立しようとする意志と手法をアジアから発信し、地球上の全ての人間の世紀であるべき21世紀における科学技術と社会との新しい関係の姿を提案する。国連のWSIS(World Summit for the Information Society)が提示する「情報格差問題」への一つのアクションとして位置付けている。


「量子コンピューティングのための量子エンタングルメント制御」

古澤 明 助教授 (物理工学専攻)

  ナノテクノロジーの進歩に伴い、我々の制御し得る物理的対象は極めて小さくなった。このため、このような「デバイス」を制御する原理は古典力学から量子力学に移りつつある。また、量子力学的効果を積極的に用いることにより、古典的には不可能であった「動作」が可能となりつつある。その究極として、量子力学を動作原理とした量子コンピューターが考えられ、世界中で精力的に研究が行われている。ここで、量子コンピューターにおける中心的な量子力学的効果は、量子エンタングルメント(もつれ)と呼ばれる量子力学特有の相関である。さらに突き詰めると、量子コンピューティングとは多量子系での量子エンタングルメント制御とも言うことができる。
  私は、1998年カリフォルニア工科大学において、最も基本的な量子エンタングルメント制御プロトコルである決定論的量子テレポーテーション実験に世界で始めて成功した。この実験では量子光学的に生成した2量子系でのエンタングルメント(アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン相関とも呼ばれる)を制御しており、最も基本的な量子コンピューティングとなっている。この実験結果は1998年にScience誌の10大成果に選出された。
  その後、私たちの東京大学のグループでは、同分野の研究を継続して行っている。東京大学での最も大きな成果は、今まで行われてきた量子エンタングルメント制御が主に2量子系であったのに対し、3量子系に拡張したことである。筆者のグループは、量子光学的手法を用い、3量子系でのエンタングルメント(グリーンバーガー・ホーン・ザイリンガー相関とも呼ばれる)の生成に成功している。この手法を用いると多量子系でのエンタングルメントも生成可能となることから、この成果は多量子系エンタングルメント制御であるユニバーサル量子コンピューター実現へ向けた大きな前進となっている。

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