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研究成果「自然発症低身長ラットの原因遺伝子とその分子メカニズムの解明」研究成果

研究成果「自然発症低身長ラットの原因遺伝子とその分子メカニズムの解明」

発表内容

「自然発症低身長ラットの原因遺伝子とその分子メカニズムの解明」

発表者

筑田博隆(医学系研究科、助手)
川口  浩(医学系研究科、助教授)

発表の概要

  骨が成長・再生する際には、まず軟骨細胞が増殖した後に肥大分化し、最終的に骨へと置換される軟骨内骨化とよばれる過程を経ます。この過程の異常は、骨成長障害や骨折治癒の遅延等を引き起こします。今回、軟骨内骨化の過程で軟骨細胞の増殖から肥大分化へのスイッチとして働く分子を、東京大学大学院医学系研究科整形外科の筑田博隆助手、川口浩助教授らが東京医科大動物センターの米田嘉重郎教授(故人)と共同で同定したので発表いたします。
  研究グループは、突然変異で生まれた低身長ラット KMI を樹立し、この原因遺伝子が cGMP-dependent protein kinase (cGKI I) という細胞内リン酸化酵素であることを解明しました。KMI ラットは胎児期の骨形成は正常ですが、生後徐々に四肢および体幹の成長が遅くなり、成長しても正常ラットの60‐70%の身長にとどまります。また、骨折治癒も著しく障害されていました。組織学的には KMI の軟骨では増殖を終えた軟骨細胞が次の肥大分化段階に進めなくなっていることから、cGKI I が軟骨細胞の増殖から肥大分化への分子スイッチであることがわかりました。さらに、cGKI I は軟骨分化のキー転写因子である Sox9 の細胞核内への移行を制御することでこのような作用を呈していることを明らかにしました。
 cGKI I については、マウスにおいてもその欠損が低身長の原因となることがわかっており (Science 274: 2082, 1996)、動物種を超えて骨の成長を制御する因子であると考えられました。また、KMI では骨以外の臓器には全く異常が見られないこと、その下流分子である Sox9 の遺伝子変異がヒトにおいてキャンポメリック骨異形成という致死性の重篤な小人症を呈すること、しかしながら cGKI I は従来知られている遺伝的な小人症の原因遺伝子ではないことより、cGKI I は正常人の身長や手足の長さを制御している遺伝子である可能性が強いと考えています。研究グループでは、現在ヒトにおける cGKI I 遺伝子多型と身長との関係の検討を行っています。また、cGKI I は軟骨の肥大分化を促進することによって、骨・軟骨再生医療にも応用できると期待しています。

発表雑誌

Genes & Development 10月1日号
論文タイトル「Cyclic GMP-dependent protein kinase I I is a molecular switch from proliferation to hypertrophic differentiation of chondrocytes」

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