PRESS RELEASES

印刷

東京大学に新規寄付講座開設記者発表

東京大学に新規寄付講座開設

  東京大学(本部:東京都文京区、総長:佐々木 毅)は、平成16年10月1日、下記企業など(医療用医薬品・一般用医薬品を開発する製薬企業、保険薬局全国チェーン企業、地域薬剤師会、医薬品卸企業)の支援により、東京大学大学院薬学系研究科・薬学部内に育薬・医薬品適正使用の研究・教育をめざす寄付講座「医薬品情報学講座」を開設しました。

<主に医薬用医薬品を製造販売する製薬企業>
・科研製薬株式会社(本社:東京都、社長:乾四朗)
・杏林製薬株式会社(本社:東京都、社長:萩原郁夫)
・塩野義製薬株式会社(本社:大阪府、社長:塩野元三)
・第一製薬株式会社(本社:東京都、社長:森田清)
・大鵬薬品工業株式会社(本社:東京都、社長:宇佐美通)
・三菱ウェルファーマ株式会社(本社:大阪府、社長:小峰健嗣)

<主に一般用医薬品を製造販売する製薬企業>
・湧永製薬株式会社(本社:大阪府、社長:草井由博)

<医薬品卸企業>
・東邦薬品株式会社(本社:東京都、社長:松谷高顕)

<保険薬局全国チェーン企業>
・株式会社オーパス(本社:大阪府、代表取締役:小池由久)
・総合メディカル株式会社(本社:福岡県、社長:金納健太郎)

<地域薬剤師会>
・社団法人福岡市薬剤師会(本部:福岡県、会長:合澤英夫)

各項目内で五十音順

  以下に本講座開設に至ったその必要性、目的・目標・計画、期待される成果、本講座の概要、担当教授のプロフィールなどを記載致します。

【必要性】

  薬害・有害事象の発生や不十分な薬物治療、医薬品の市場からの撤退などは、大きな社会的損失である。こうした損失を回避するためには、上市後に医薬品が適正に使用されているかを監視する(医薬品適正使用とリスクマネジメント)とともに、新たな副作用・有害事象、使用法・適用法、使用上の注意、適応外使用法を発見し、それらのメカニズムや対処法を提示する(育薬)必要がある。特に、問題解決に薬物動態・動力学・製剤学などの手法は有用である。これらにより、薬害の抑制と薬物治療の適正化が可能となり、さらに製品寿命の延長、新たな創薬や剤形のニーズの掘り起こしなどが期待される(医薬品のプロダクトライフサイクルマネージメント)。医薬品上市後のこれら一連のプロセスは正に医薬品のライフタイムマネージメント(Drug Lifetime Management:DLM)と呼ぶに相応しい。一方で新薬開発の費用は年々高騰しており、製薬企業においては、これらを安定して確保するために上市後の製品寿命管理の重要性が急速に認識されるようになってきた。DLMの推進は製品寿命管理に直結するため、医療現場・製薬現場の研究者・技術者(薬剤師等)によるDLMへの期待もますます大きくなっており、本分野の基盤となる「医薬品情報の収集・構築・評価・提供システム」と「人材育成システム」の構築は焦眉の急である。

【目的・目標・計画】

  医療現場での医薬品適正使用・育薬研究分野と製薬現場での医薬品のライフサイクルマネージメント研究分野を融合させて、確実に医薬品のライフタイムマネージメント(DLM)を遂行するための「医薬品情報学」(Drug Informatics)を確立することを研究面の使命とする。また、DLMにおいて指導的役割を果たすべき人材をPreceptorとして輩出するための体系的教育システムを構築することを目的とする。
  研究の目標・計画として、DLMの研究を推進するために、「医薬品情報」の 1)適正な収集、 2)薬物動態・動力学に基づく評価・解析、 3)種々危険因子(遺伝子多型、薬物相互作用、肝・腎疾患など)による薬物動態・作用変化の定量的予測、 4)最適な規格化/標準化/電子化、 5)医療現場に対する適切な提供などを取り扱う医薬品情報学の学問体系を確立する。
  教育の目標・計画として、製薬企業における医薬品のプロダクトライフサイクルマネジメント分野、並びに医療機関等における医薬品適正使用・育薬分野に従事する中堅的研究者・技術者あるいは薬剤師を対象に、DLMを指導的立場から推進できる人材を養成する。
  更に平成17年度以降に設置予定している「附属薬局」を通じて上記計画を実践・検証する。

【期待される成果】

  医薬品情報学の研究の推進とDLMを実施できる人材の育成より、製薬企業においては医薬品の製品寿命の延長や、優れた新薬創製のための研究開発費の確保、医薬品開発(創薬とDLM)サイクルの効率化が期待できる。また、知識・技能・態度に研鑽を積んだ人材を介して、医薬品開発における医療現場と製薬現場との効率的な連携が可能となる。最終的には、医薬品情報学の研究成果と輩出した人材が、医薬品産業の活性化・国際的競争力は言うに及ばず、薬害の防止や国民の薬物治療の質的向上に大きく貢献すると考える。更に、本テーマに深く関わる、情報関連産業、医療関連サービス産業などの発展にも寄与すると考える。

■寄付講座の概要

  1. 大学名           :  東京大学 大学院薬学系研究科
  2. 寄付講座の名称      :  医薬品情報学講座 Drug Informatics
  3. 寄付額           :  総額2億4千9百万円(平成16年10月1日現在)
  4. 設置期間          :  平成16年10月~平成21年10月(5年間)
  5. 教員名(括弧内は前職) :  教授 澤田康文(九州大学大学院薬学研究院臨床薬学講座教授)

■医薬品情報学講座担当教授(澤田康文)のプロフィール

<経歴>
昭和49年03月  東京大学薬学部薬学科卒業
昭和51年03月  東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了
昭和54年09月  東京大学助手(薬学部)
昭和55年09月  薬学博士(「薬物代謝の予測に関する研究」)
昭和60年10月  米国国立衛生研究所(NIH)訪問研究員
平成02年06月  東京大学助教授(医学部)、附属病院薬剤部副薬剤部長
平成07年04月  九州大学教授(薬学部)
平成11年04月  九州大学大学院薬学研究科教授
平成12年04月  九州大学大学院薬学研究院教授
平成16年10月  東京大学大学院薬学系研究科教授
          現在に至る。

<専門・専攻>
  臨床データ・エビデンスの収集・解析と医薬品情報の構築・提供に関する研究を行い、医薬品適正使用・育薬・プロダクトライフサイクルマネジメントを統合する「医薬品のライフタイムマネジメント」の考え方を提唱し、それを実施する人材の育成を行っている。

<主な著書>
「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析・第1集」(じほう)、「処方せんチェック:消化管吸収と相互作用」(南山堂)、「処方せん鑑査・疑義照会」(南山堂)、「処方せんチェック・虎の巻」(日経BP社)、「薬学と社会」(じほう)、「薬にあぶない飲み方・使い方」(講談社)、「薬の併用を考える」(文光堂)、「しのびよる身近な毒」(羊土社)、「この薬はウサギかカメか」(中央公論新社)、「薬の飲み合わせ」(講談社)、「薬の精神・神経に対する副作用」(南山堂)、「臨床医のための薬の相互作用とそのマネージメント」(南山堂)、「薬剤予測学入門」(じほう)、「薬による脳の探求」(南山堂)他

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる