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東京大学工学系研究科・工学部第12回記者会見研究成果

東京大学工学系研究科・工学部第12回記者会見

プログラム:航空宇宙工学専攻、環境海洋工学専攻における最近の研究紹介

 

「膜面構造を持つ新しい宇宙カプセルの高速飛行実証」

           鈴木 宏二郎 助教授 (航空宇宙工学科)

 東京大学工学系研究科、新領域創成科学研究科、宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部(ISAS)および九州大学工学研究院の大学院生を中心としたチームは、ISAS大気球観測センターの全面的な支援の下、やわらかな膜構造を持つ新しい大気圏突入カプセルの飛行実験に成功した。機体は重量約70kg、最大直径約1.4mであり、直径約50cmの金属製本体部まわりに円錐台状に広がる耐熱繊維織物製の傘と、それを支える収納/展開可能な金属フレームが特徴である。実験は平成16年8月28日に三陸大気球観測所で行われた。機体を気球により高度約4万mまで上昇させた後、ゴンドラから切離して自由落下飛行させた。最大マッハ数は0.94に達し、着水までの間の飛行は安定であった。膜構造は、コンパクトに収納し展開が可能、軽量大面積で大気圏突入の空力加熱が大幅減少、環境に応じて変形し飛行安定性が向上、等の利点がある。本飛行実証は、将来の惑星探査機や宇宙輸送機における膜構造実用化への第一歩となったと言える。

 

「革新的飛行ロボットプロジェクト IARP」

影山 和郎 教授 (環境海洋工学専攻)
鈴木 真二 教授 (航空宇宙工学専攻)

  平成15年度に採択された、21世紀COEプログラム「機械システムイノベーション」(拠点リーダ:笠木伸英 教授、工学系研究科)の活動の一環として、革新的飛行ロボットプロジェクト(Innovative Aerial Robot Project、IARP)を推進している。同プロジェクトは、当該21世紀COEプログラムの目指す、微小化、分散化、可動化、機能化、プロセス強化、多様化、個性化の方向性を実現する、技術開発型のプロジェクトである。災害時の救援支援やビル火災時の人命救護などを目的として、固定翼型の無人飛行体、回転翼型の超小型飛翔体など、具体的な飛行ロボットの開発を行っている。なお、本年12月10,11日に武田先端知ビルにおいて開催された、International Symposium on Innovative Aerial/Space Flyer Systemsにおいて研究成果を広く公開している。
  また、固定翼飛行ロボットはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が企画する2005年愛知万博での「次世代ロボット実用化プロジェクト」に採択され、OBK(大田ビジネス創造協議会)、中央大学理工学部、三菱電機株式会社と共同で「高機機能飛行ロボット」として開発中である。

 

「浮体式洋上風車の開発」

           鈴木 英之 教授 (環境海洋工学専攻)

  わが国のエネルギー供給の大きな部分を占めている、石油や天然ガスなど化石燃料は有限な資源であり確実に枯渇に向かっている。今世紀半ばからは生産が減少に向かうと予想されている。さらに、中国など人口大国の経済成長に伴い、化石燃料の消費は拡大しつつあり、獲得に向けた競争が激しくなっている。今後エネルギー調達コストの上昇や安全保障の問題が重要になってくると予想される。さらに、化石燃料の消費は地球温暖化物質であるCO2の大量排出の最大の原因でもあり、地球環境問題の観点からは利用の削減が求められている。
 今後のわが国のエネルギー問題については、再生可能エネルギーの利用による脱化石燃料社会の模索が求められている。風力エネルギーに関しては、ヨーロッパを中心として風車の大型化に伴いkWh当たりの電力単価が低減しつつあり、事業としての成立する領域に達している。アメリカも関心を高めている中、わが国の対応は遅れている。わが国については陸上における風力エネルギー資源量はごく限られているが、洋上に目を向けると、膨大な資源量があり、経済的に開発できればわが国のエネルギー供給の一翼を担う可能性を秘めている。一方で、わが国の海底地形は、沖に出るにしたがって急速に水深を増すため、浮体式の風車が必要になる。洋上の風力エネルギーを開発するには軽量で効率の良い浮体式洋上風車の開発が必須となる。この観点から浮体式洋上風車の開発に取り組んでおり、台風が襲うわが国周辺の荒い海でも十分安全に成立し、軽量で効率の良い浮体式洋上風車を提案している。

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