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米国ブルックヘブン国立研究所RHICにおける「完全な流体」の発見研究成果

米国ブルックヘブン国立研究所RHICにおける「完全な流体」の発見

  米国ブルックヘブン国立研究所RHIC重イオン衝突型加速器における金・金の正面衝突を用いて生成された超高温の新しい状態は、当初予想されていたようなクォークとグルーオンの自由気体ではなくて「完全な流体」であるという実験的証拠が得られた。

1 発表者
浜垣秀樹  東京大学大学院理学系研究科
附属原子核科学研究センター(センター長:酒井英行)・助教授
小沢恭一郎 同・助手

 米国ブルックヘブン国立研究所からの発表と同時に、共同研究機関(筑波大学、KEK、広島大学、理化学研究所等)からも同時に発表の予定

2 発表概要
 ビッグバン直後に存在していたと考えられるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)という未知の物質を実験室において実現しその性質を調べるため、米国ブルックヘブン国立研究所RHIC重イオン衝突型加速器において国際共同実験研究を推進している。2000年以来100GeV/核子に加速した金同士を正面衝突させて得られる状態を実験的に調べてきたが、系の集団運動的な性質を調べることで、この超高温状態は、従来の予想に反して、クォークとグルーオンが自由に飛び回る気体の状態ではなく「完全な流体」であるとの証拠が得られた。

3 発表内容
 クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)に関して、これまでCERN研究所のSPS加速器での一連の実験で、その実現の兆候が見られたと考えられていたが、決定的な証拠は得られておらず、ましてやその性質に関する知見は皆無であった。2000年に米国ブルックヘブン国立研究所のRHIC重イオン衝突型加速器において、高い衝突エネルギーでの実験研究が開始され、QGP実現の決定的な証拠とQGP状態の物質性質の研究を意図している。この研究のため、日米共同でPHENIX実験という新たな測定器を開発・建設した。既に多くの新しい結果が得られつつある。特に、媒質中でのジェットの振る舞いの研究から高い密度状態実現の証拠は見出されたが、今回、粒子の放出角度分布・運動量分布等、系の集団的な振る舞いの研究から、衝突直後の高温状態における系の時空発展が(粘性が零の)完全流体として記述できることがわかってきた。強い相互作用が支配する系において、このような高温状態で理想的な流体が実現することは、クォークとグルーオンが自由に飛び回る気体状態であろうとのこれまで予想と大きく相反する結果であり、大きな注目を集めつつある。従来の実験室においては実現困難であった極端条件下における物質の性質に関する研究の大きく前進させる成果であり、今後、さらに重要な発見が期待される。

4 発表雑誌
Nuclear Physics A に発表の予定

5 問合せ先
浜垣秀樹  東京大学大学院理学系研究科
附属原子核科学研究センター(センター長:酒井英行)・助教授
小沢恭一郎 同・助手
       
6 用語解説集
http://www.cns.s.u-tokyo.ac.jp/~hamagaki/press05/index-j.html を参照のこと。

7 添付資料
http://www.cns.s.u-tokyo.ac.jp/~hamagaki/press05/index-j.html を参照のこと。

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