PRESS RELEASES

印刷

東京大学工学系研究科・工学部第14回記者会見研究成果

東京大学工学系研究科・工学部第14回記者会見

1.日 時:平成17年5月9日(月) 14:00~16:00

2.場 所:工学部列品館(本郷キャンパス、正門入ってすぐ左側の建物)
中会議室(2階)

3. プログラム
(1) 機械工学専攻 丸山茂夫教授
「垂直配向単層カーボンナノチューブ膜による紫光偏光素子」             
(2) 産業機械工学専攻 鎌田実教授
「ドライブレコーダを用いたヒヤリハット分析による交通事故防止に関する研究」
(3)知能機械情報学専攻 中村仁彦教授
「メッシュマーカ・モーションキャプチャーシステム」
(別名:スパイダーマン・キャプチャー)             
(4) 知能機械情報学専攻 土肥健純教授
「厚生労働省科学研究費における医工連携推進役として、本学工学分野が参加」 


(1) 発表タイトル:「垂直配向単層カーボンナノチューブ膜による紫光偏光素子」

発表者:丸山 茂夫

発表概要:
  アルコールCVD法によって石英基板上に合成した垂直配向単層カーボンナノチューブ膜が可視・紫外光に対する優れた偏光特性を示し,紫外光に対する微小でかつ高エネルギー密度に耐えうる偏光素子となる.

発表内容:
  アルコールを炭素原料とした触媒CVD法によって石英基板上に基板と垂直方向に成長する高純度単層カーボンナノチューブ膜の合成が可能である.また,CVD中のレーザーによるオンライン吸光モニターによって,その膜厚を1ミクロンから10ミクロン程度の間で制御することができる.単層カーボンナノチューブは,その長軸方向に直線偏光した光を選択的に吸収することから,この単層カーボンナノチューブ膜を傾けることで,これを透過する光は一定方向の直線偏光となる.この偏光特性は,可視光,紫外光の広い波長範囲で実現可能であるが,波長280nmの紫外光に対してもっとも顕著である.膜の成分は,高純度の単層カーボンナノチューブのみであり,熱的,化学的に安定であると同時に高い熱伝導率をもち,高エネルギー密度のエキシマレーザー(XeCl 308 nm, KrF 249 nm?)の偏光素子として用いることが可能となると予想される.リソグラフィーなどの半導体プロセスへの応用をはじめとして,様々な分野での利用が期待される.

発表雑誌:
内容の一部は下記の論文で公表済み.
Y. Murakami, E. Einarsson, T. Edamura and S. Maruyama, "Polarization dependence of the optical absorption of single-walled carbon nanotubes," Phys. Rev. Lett., (2005), vol. 94, pp. 087402.

8.注意事項:

9.問い合わせ先:
丸山茂夫
東京大学 大学院 工学系研究科 機械工学専攻 教授

10.添付資料:
画像
URL: http://www.photon.t.u-tokyo.ac.jp/index-j.html


(2) 発表タイトル:ドライブレコーダを用いたヒヤリハット分析による交通事故防止に関する研究

発表者:鎌田 実

発表概要:交通事故削減に向けて、ドライブレコーダというデータ・映像記録装置を用いて、事故直前のヒヤリハット現象のデータを採取し、その分析から対策案を導く検討を行なっている。これまでにタクシー35台に装置を取り付け、数百のデータを採取してデータベースを構築している。

発表内容:詳細の内容は2005年5月20日に自動車技術会の春季大会にて発表予定

問い合わせ先:鎌田 実

ドライブレコーダ:航空機のフライドレコーダの自動車版。事故等の事象の前
後の映像やデータを記録する。


(3)発表タイトル 「メッシュマーカ・モーションキャプチャーシステム」
(別名:スパイダーマン・キャプチャー)
発表者:   中村仁彦 教授 (情報理工学研究科 知能機械情報学専攻)
発表概要: 
受動的な光学式マーカを用いたモーションキャプチャーシステムではマーカを区別するためにマーカを40~50個程度に限る必要があった.再帰性反射材を用いたメッシュ状のパターンをマーカとして用いることによって,マーカ数を10倍程度に増やした高精細なモーションキャプチャーシステムを開発した.
発表内容:  (別紙参照)
発表雑誌:
平成17年4月21日 バルセロナ(スペイン)で開催されたIEEE International Conference on Robotics and Automation(4月19-22日)で発表.特許出願済.
問合せ先:
   東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報工学専攻
   教授 中村仁彦 
用語解説
モーションキャプチャーシステム
人間の体の動きを計測するシステム.特に全身の運動を3次元で計測する装置はCGアニメーション制作だけでなく,医療・リハビリテーションなどに利用されることも多い.機械式,磁気式,光学式などがある.
受動的光学式マーカ
  ビデオカメラを用いてモーションキャプチャーを行う光学式では,計測し易いようにマーカを人間の体に取り付けることが多い.マーカにはコンピュータからの指令で自ら光るものと,再帰性反射材で覆われたボールのようにカメラの方角から当たる照明によって明るく光るものがある.後者を受動的光学式マーカという.
再帰性反射材
  細かいガラスビーズなどを含む反射性の材料によって作られた塗料やそれを使ったできたテープのことで,光が当たる方向に光を反射する性質をもっていることが名前の由来.
添付資料: (別紙参照)

以下別紙

「メッシュマーカ・モーションキャプチャーシステム」
(別名:スパイダーマン・キャプチャー)

東京大学
情報理工学研究科知能機械情報学専攻
教授 中村仁彦

受動的な光学式マーカを用いたモーションキャプチャーシステムではマーカを区別するためにマーカを40~50個程度に限る必要があった.東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の中村仁彦 教授,山根克 講師,谷江博昭 大学院生らは,再帰性反射材を用いたメッシュ状のパターンをマーカとして用いることによって,マーカ数を10倍程度に増やした高精細なモーションキャプチャーシステムを開発した.

モーションキャプチャーシステムは,CGアニメーションのキャラクタの運動を作るために,リハビリテーションではリハビリ効果の測定に,ロボティクスではヒューマノイドロボットの運動を生成するための人間行動計測に,さまざまに必要とされるようになってきた.モーションキャプチャーシステムを高精細にすることによって,全身の運動だけではなく指の動き,顔の表情,将来は運動中の筋肉の形状の変化などを同時に計測することができる.

メッシュマーカ・モーションキャプチャシステムよる計測結果 (左)

再帰性反射材のメッシュマーカをもつキャプチャースーツ (右)

  画像  画像

(4) 「厚生労働省科学研究費における医工連携推進役として、本学工学分野が参加」

知能機械情報学専攻 土肥健純教授

  近年各大学で医工連携が叫ばれているが、従来、本学工学部の教員たちも本学のみならず他大学医学部や病院などの臨床医学の最前線支援部隊として活動している。特に本学では、7年ほど前、当時の通商産業省から、医工連携関連の大型研究費を得て、本学医学部病院と工学部の教官とが密接な連携で研究を推進し大きな成果をあげた。これまで本学機械工学関連分野では、臨床医学の現在抱えている問題点の解決や、新しい分野の共同開拓の視点から共同研究の体制をとってきた。今回、決定された厚生労働省科学研究費において、本学工学部の教員が機械工学分野の研究者として主要な研究開発を担当することになった。これも、従来厚生労働省の研究開発支援が医薬中心であったのに対して、工学系の地道な努力により工学部との共同開発研究も高く評価していることの表れと思われる。
  そのため、本学機械系グループの基本方針である患者を救うための研究として医学部の臨床系研究者と共同研究を進める予定である。

本学医学部 中村耕三 教授 整形外科
テーマ 高齢者の大腿骨頚部骨折等の治療を支援する高精度手術支援システム開発研究
国立成育病院 千葉敏雄部長 特殊診療部・胎児外科
テーマ ハイリスク胎児の子宮内手術におけるナノインテリジェント技術デバイスの開発研究
  本学工学部  教  授 担当分野 
機械情報工学科 土肥健純 教授 手術支援ロボット・メカトロデバイス、実3次元医用画像
手術ナビゲーション
   同 上 下山 勲 教授 マイクロ・ナノデバイス
産業機械工学科 光石 衛 教授 手術支援ロボット
システム創成学科 佐久間一郎 教授 手術支援システム、生体光計測システム

その他、医工連携に関係している工学部の機械工学系の教授としては、
機械情報工学科:中村教授、神崎教授、廣瀬教授
産業機械工学科:中尾教授、鎌田教授、久田教授
機械工学科:笠木教授、松本教授、鷲津教授、牛田教授
システム創成学科(旧精密機械工学科関連分野):樋口教授
など、多くの研究者がいる。

 


アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる