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天然有機化合物の構造と機能の多様性を生み出す酵素の発見研究成果

天然有機化合物の構造と機能の多様性を生み出す酵素の発見

東京大学生物生産工学研究センター 記者会見のお知らせ

1 発表日時:2005年6月15日(水)15:00~16:00

2 発表場所:東京大学農学部弥生講堂会議室

3 発表タイトル:天然有機化合物の構造と機能の多様性を生み出す酵素の発見

4 発 表 者:東京大学生物生産工学研究センター 細胞機能工学部門
葛山 智久 (くずやま ともひさ)助教授

5 発表概要:土壌微生物の放線菌から、天然有機化合物の構造と機能の多様性を生み出すことのできる芳香族基質プレニル基転移酵素を発見した。この新規酵素は、新しい化学反応を触媒することができるだけでなく、その立体構造も、PTバレルと名付けたタンパク質の新しい折畳み構造であった。

6 発表内容:別紙

7 発表雑誌:Nature (6月16日発行)

8 問合せ先:東京大学生物生産工学研究センター 細胞機能工学部門
葛山 智久助教授
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/biotec-res-ctr/saiboukinou/


別紙

Structural Basis for the Promiscuous Biosynthetic Prenylation of
Aromatic Natural Products

天然有機化合物の構造と機能の多様性を生み出す酵素の発見

東京大学 生物生産工学研究センター 細胞機能工学部門
葛山 智久

 土壌から分離された放線菌、Streptomyces sp. CL190株が生産するテルペン-ポリケタイド融合化合物、ナフテルピンの生合成における鍵酵素を見つけました。
  この鍵酵素の結晶構造を高解像度(最高1.55 A)で解いたところ、この酵素は、これまでに発見されていない折畳み構造(protein fold)をとっていることが分かり、この構造をPTバレルと名付けました。詳しい構造解析からは、このバレル(樽構造)の中心付近に基質が結合して触媒反応(下記のプレニル化反応)が起こることを明らかにすることができました。
  次に、この酵素の性質を調べてみると、基質特異性が極めて寛容(promiscuous)であり、色々な化学構造をもつ、オリベトールやレスベラトロールといった植物ポリケタイドや、ナリンゲニンやゲニステインといったフラボノイドに対しても、炭素数10のプレニル基(ゲラニル基)を付加できることが分かりました。しかも、新規な化合物もできていました。また、ゲノムが解読されている別の放線菌からは、炭素数5のプレニル基(ジメチルアリル基)を付加するタンパク質も見つけ、その機能を明らかにしました。
  有機化合物の中には、プレニル化という修飾を受けることによって、その生理機能が変化して、抗菌、抗酸化、抗炎症、抗ウィルス、抗癌活性を示すようになる化合物があります。今回発見した2つの酵素は、芳香族基質に対して寛容な基質特異性を示すため、芳香族化合物に対する部位特異的なプレニル化反応を触媒する酵素として利用できます。今後、今回得られた高解像度の構造情報を基に、多様な天然有機化合物に対するプレニル化酵素をデザインし、それらを生体触媒(biological catalyst)として用いて化学構造の多様性をより増大させることにより、有用な生理機能を持つ新しい化合物を創製できると考えています。

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