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記者会見「地殻構造探査で明らかになった首都圏直下の震源断層の形状」研究成果

記者会見「地殻構造探査で明らかになった首都圏直下の震源断層の形状」

1.発表日時:2005年7月14日(木)14:00~

2.発表場所:東京大学地震研究所 講義室

3.発表タイトル:「地殻構造探査で明らかになった首都圏直下の震源断層の形状?関東西部で浅くなった震源断層、反射強度とアスペリティの関連性を発見?」

4.発表者:佐藤 比呂志 (東京大学地震研究所 教授)

5.発表概要:
  弾性波による地下構造探査により、首都圏直下に沈み込むフィリピン海プレート上面に位置する震源断層のイメージングに成功し、特に関東西部で従来推定されていてものよりかなり浅くなることを明らかにした。また、断層面での反射強度がアスペリティ領域では小さいことを示した。

6.発表内容:
  別紙 参照

7.発表雑誌:
  米国科学誌、サイエンス誌

8.問い合わせ先:
佐藤 比呂志 東京大学地震研究所 地震予知研究推進センター



地殻構造探査で明らかになった首都圏直下の震源断層の形状

関東西部で浅くなった震源断層、反射強度とアスペリティの関連性を発見
  国立大学法人東京大学地震研究所(所長 大久保修平)は、文部科学省の研究委託事業である大都市大震災軽減化特別プロジェクトの一環として、独立行政法人防災科学技術研究所(理事長 片山恒雄)他4機関(注1)と共同で、平成14年から17年度に、大都市圏地殻構造調査研究を実施し、首都圏直下に沈み込んだフィリピン海プレート上面に位置する震源断層のイメージングに成功した。新しく得られたプレート上面深度は、4から26 kmで、関東西部で従来推定されていたものよりも5から17 km浅くなった。この新しいプレートの形状を用いて1923年関東地震の滑り分布を検討した結果、最大すべり位置は、従来の推定より北に移動する。このように、今回得られた新しいプレート境界面の形状は、首都圏のプレート境界で発生する地震に伴う強震動の評価に大きく影響する。この結果は、7月15日に発行される米国科学誌、サイエンス誌に掲載される。

目的と背景: 首都圏下にはフィリピン海プレートが沈み込んでおり、本州側のプレートの境界面では、関東地震(1923年)や元禄地震(1703年)のような、マグニチュード8クラスの巨大地震が発生してきた。効果的な地震災害軽減を行うには、地震に伴って発生する地震動(強い揺れ)を予測する必要があり、このためには地震を発生させる震源断層の位置とその性質、断層から発生する強震動を伝搬する速度構造を明らかにする必要がある。このため平成14年度と15年度に、首都圏の4測線で地殻構造探査を実施し、平成16年度、17年度に地殻構造断面を作成した。

成果: 4測線すべてにおいて、深さ26kmまでのフィリピン海プレート上面のイメージングに成功した。得られたプレート境界(震源断層)の形状は、従来、自然地震から推定されていた境界面よりは有意に浅く、特に関東山地では最大17 km程度浅くなっている。新たに得られたプレート形状より断層モデルを作り、関東地震に伴うすべり量分布を再計算した。こうして得られた地震時にすべり量の大きい領域(アスペリティ領域)と、地殻構造探査の結果明らかになった反射強度には、負の相関が見られた。これらの成果は、将来、関東地震と同様な地震が発生した時に、首都圏での地震に伴う強い揺れを高い精度で予測する上で、極めて重要である。

【用語の説明】
アスペリティ: プレート境界などの断層面上で、地震時に大きくすべり、強い地震波を出し、地震の時以外では固着していてすべらない領域のことを、アスペリティと言う。この領域を予測することは、地震によって発生する強い揺れを予測する上で、極めて重要だと考えられている。
(注1) 共同研究実施機関
米国南カリフォルニア大学 地球科学部(部長 ヘニエイ・トーマス:Chair, Thomas Henyey)
株式会社 地球科学総合研究所(代表取締役社長 青木豊)
国立大学法人 千葉大学理学部(部長 金子克美)
米国テキサス大学エルパソ校 地質科学部(部長 ドーザー・ダイアンChair, Diane I. Doser)

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