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大学院工学系・情報理工学系研究科第17回記者会見研究成果

大学院工学系・情報理工学系研究科第17回記者会見

1.日  時  平成17年11月18日(金) 14:00~16:00

2.場  所  工学部列品館(本郷キャンパス、正門入ってすぐ左側の建物)
中会議室(2階)

3.プログラム

司会:富重道雄(工学系研究科物理工学専攻・助教授)

○「光格子時計:時間計測の限界に迫る」
   発表者:工学系研究科物理工学専攻  助教授 香取秀俊 

○「統計物理モデルによる市場価格変動への情報化効果の解明」
   発表者:工学系研究科システム量子工学専攻  教授 大橋弘忠

○「チャンス発見手法による製品デザイン」
   発表者:工学系研究科システム量子工学専攻  助教授 大澤幸生                       

4.問い合わせ先
工学部広報室長(教授)堀井秀之
工学系研究科・情報理工学系総務課主査(庶務担当)大井 哲
工学部広報室員(助教授)富重道雄


光格子時計:時間計測の限界に迫る

発表者:香取秀俊(物理工学専攻)

発表概要
・「光格子時計」の開発による時間計測技術の新たな展開
・2005年のノーベル物理学賞との関連
 
発表内容
香取は、原子時計の精度を18桁台にまで向上させることが可能な「光格子時計」の手法を2001年に提唱し、同研究グループではその実証実験を推し進めてきた。
現在、光格子時計手法は次世代の原子時計の有力候補のひとつと認知され、世界各国の主要標準研究所で研究が始まっている。精密な原子時計の開発は、相対論の検証や物理定数の恒常性の研究など基礎物理学の根幹をなすとともに、GPSによる測位システム等の応用面においても大きなインパクトをもつ基幹技術である。
折しも今年のノーベル物理学賞は、このような超精密原子時計の実現に欠かせない、精密レーザー分光技術・光周波数計測技術を開拓してこられた、ジョン・ホール博士、テオドール・ヘンシュ博士に与えられている。

問合せ先  香取秀俊 


統計物理モデルによる市場価格変動への情報化効果の解明

発表者:大橋弘忠

発表概要
統計物理モデルを用いて市場のシミュレーションを行った。情報化の進展により、市場の価格変動はより顕著となることを明らかにした。

発表内容
イジングスピン系の統計物理モデルを用いて多数のエージェントによる売買の市場をモデル化し、価格変動の動きをシミュレーションした。これにより、現実の市場に見られる特異な現象、すなわち、大きな価格変動の頻度がランダム過程よりはるかに大きいこと、ボラティリティの時間相関が長期に続くことなどを再現した。次に、エージェントが利用できる情報について、情報化の進展に伴い顕在化すると考えられる情報の不完全性と情報の遅延が市場価格変動に及ぼす効果を検討し、いずれの場合も価格変動がより激しいものとなることを明らかにした。また、情報の伝送路をネットワーク構造で表現し、ネットワークのハブや中心性が価格形成に及ぼす影響を評価した。

問合せ先
東京大学工学系研究科システム量子工学専攻 数理社会デザイングループ
大橋弘忠、陳 ?、橋本康弘

用語解説:
イジングスピン
磁性体のモデル化に用いる統計物理モデルのひとつ、上向き、下向きのスピンの集合で磁性体の磁化特性を表わす。
ボラティリティ
価格変動の絶対値、上がり下がりの方向を考えず変化の大きさだけに着目する概念


チャンス発見手法による製品デザイン
発表者: 大澤幸生

概  要
地震予知、マーケティング等に幅広く適用されてきたチャンス発見手法の成果から、製品開発・特許申請など製造業界の成果が生まれている。

発表内容
大澤研究室で開発・改良が進められているビジネスデータ可視化ツール「キーグラフ(KeyGraph)」が、機能を拡充して公開されている。
このツールを用いて、顧客データからビジネスチャンスを見出したというマーケッティング担当者は、これまでにも報告されていた。キーグラフの特徴は、市場に出始めたばかりの商品の位置づけを表示する独自技術によって、ユーザが新しいビジネスチャンスを発見できる点である。
大澤助教授らはこのツールを、開発部門の新製品デザインにも利用できるようにパワーアップした。企業で現場第一線の社員が顧客と接したやりとりをテキスト化しておくと、その文章は直接キーグラフに読み込まれ、単語間の関係を可視化するネットワークとして表示される。キーグラフは他に、このグラフに製品の写真や図を貼付けたり、グラフ同士を比較できるような機能を拡充した。開発者らはこの図を見て、ユーザの「思い」や「利用のシナリオ」などを知り、ユーザの望む新製品がデザインできる。この仕組みによって、ユーザの新しい希望をいち早く製品デザインに取り入れる競争力強化に役立つ。繊維・機会・電機・文房具など各種分野において新製品や特許申請を生み出している。

発表雑誌
・キーグラフを用いた地震予知について:
  日経サイエンス・裏表紙裏「ひらめきの瞬間」2005年12月号(現在発売中)
・キーグラフを用いたデザインプロセスについて:
  - Journal of New Mathematics and Natural Computing (World Scientific) 2006年3月号
  - KES International Conference 2005(メルボルン)で発表済み

注意事項
本手法を利用した製品開発事例については、企業名は日東紡績のみ公開可能。その他は公開をご遠慮ください。

問合せ先
  システム量子工学専攻・数理社会デザイングループ
大澤幸生 

用語解説
キーグラフ:ビジネス・医療・防災行動などにおけるチャンスを、データを用いて見出そうとするユーザを支援するソフトウェア。たとえば、店舗における商品購買データ(POS)では、一度に購入された商品の組み合わせを一行とし、客の購入回数に等しい行数のデータとしてキーグラフを適用する。その結果、同じ客が買いがちであるという商品間の類似性や相補関係を示すネットワーク図が可視化される。データをネットワーク状に可視化するツールは既に市販もされているが、キーグラフの特徴は、市場に出始めたばかりの商品の位置づけを表示する独自技術によって、ユーザが新しいビジネスチャンスを発見できる点である。
チャンス発見:意思決定を行うために必要となる事象を発見するための手法を研究するという情報学の一分野。大澤助教授が筑波大学ビジネス科学研究科在職中に提唱し、現在は年間に3~4回の国際会議が催されるほか、国内でもセミナーやビジネス向けのワークショップが開催されている。



 

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