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真菌に対する感染防御機構の解明研究成果

真菌に対する感染防御機構の解明

1.タイトル 
真菌に対する感染防御機構の解明

2.発表概要
  カビや酵母など真菌類は抗生物質の生産や酒、みそなどの製造など我々の生活に役立つ反面、カンジダ感染症や水虫など、やっかいな病気の原因でもある。
  さらに、Pneumocystis carinii(P. carinii)はエイズ患者や臓器移植患者など、免疫不全状態の人に、命を脅かす重篤な病気(カリニ肺炎)を引き起こす。βグルカンはこれら真菌の細胞壁を構成する糖鎖の一つであり、Dectin-1はその受容体であることが知られている。本研究では、Dectin-1が真菌の感染防御に重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした。

3.発表内容
  カビや酵母など真菌類は抗生物質の生産や酒、みそなどの製造など我々の生活に役立つ反面、カンジダ感染症や水虫など、やっかいな病気の原因でもある。
さらに、Pneumocystis carinii(P. carinii)はエイズ患者や臓器移植患者など、免疫不全状態の人に、命を脅かす重篤な病気(カリニ肺炎)を引き起こす。βグルカンはこれら真菌の細胞壁を構成する糖鎖の一つであり、Dectin-1はその受容体であることが知られている。本研究では、Dectin-1が真菌の感染防御に重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした。
  Dectin-1は細胞膜上に存在するタンパク質で、細胞外に糖鎖を認識する領域を持ち、細胞内にはITAMと呼ばれる活性化シグナルを伝えるモチーフを持つ。この分子はマクロファージや樹状細胞、好中球などの自然免疫を担う細胞に発現している。この分子がβグルカンの受容体であることから、真菌感染における役割が注目されていたが、これまでその活性は解明されていなかった。そこで、我々はDectin-1遺伝子を欠損させたマウス(KOマウス)を作製し、感染防御における役割を検討した。P. cariniiを野生型マウスとDectin-1 KOマウスの両方に感染させ、肺での菌数を計数したところ、感染1週後、2週後に野生型マウスに比べ、Dectin-1 KOマウスでは有意に菌数が増加していた。さらに、マウスにコルチゾンを投与し、免疫不全の状態にした場合でもDectin-1 KOマウスでは有意に菌数が増加していた。また、Dectin-1 KOマウスのマクロファージでは、P. carinii刺激によるサイトカイン産生は見られたものの、活性酸素の産生がほとんどみられなかった。これらの結果から、Dectin-1はβグルカンを介しP. cariniiを認識し、その殺菌に重要な役割を果たしている事が示された。これらの知見は、新たな抗真菌薬開発に役立つ可能性がある。

4.発表雑誌:Nature Immunology 平成18年12月10日18時オンライン(英国時間)

5.共同研究者
西城忍1、藤門範行1、古田隆久2、Chung Soo-hyun1、小瀧逸人1、関景輔1、須藤カツ子1、審良静男3、安達禎之4、大野尚仁4、金城武士5、仲村究5、川上和義6、岩倉洋一郎1
1. 東京大学医科学研究所・ヒト疾患モデル研究センター、2. 東京大学医科学研究所・感染遺伝学研究分野、3. 大阪大学微生物病研究所自然免疫学分野、4. 東京薬科大学薬学部免疫学教室、5. 琉球大学大学院医学研究科感染制御学講座、6. 東北大学医学部保健学科基礎検査学講座病原検査学分野
Dectin-1 plays an important role in host defense against the pathogenic fungus Pneumocystis carinii. Saijo, S., Fujikado, N., Furuta, T., Chung, S., Kotaki, H., Seki, K., Sudo, K., Akira, S., Adachi, Y., Ohno, N., Kinjo, T., Nakamura, K., Kawakami, K., and Iwakura, Y. Nature Immunol., in press.

6.問い合わせ先: 東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター
細胞機能研究分野 教授 岩倉洋一郎

7.用語解説:なし

8.添付資料:なし

9.解禁日:平成18年12月11日午前3時(日本時間)

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