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「転写因子STAT3およびSTAT5の核移行のメカニズムの解明」研究成果

「転写因子STAT3およびSTAT5の核移行のメカニズムの解明」

1.タイトル:「転写因子STAT3およびSTAT5の核移行のメカニズムの解明」

2.発表概要:
  転写因子STAT3およびSTAT5は、癌および白血病でしばしば恒常的に活性化されている。特にSTAT3はほとんどすべての固形癌で活性化されており、細胞の癌化に重要な働きをすることが分かっている。今回の研究結果は、活性化されたSTAT転写因子が核内に移行するメカニズムに、低分子量G蛋白質Rac1、その調節因子MgcRacGAPが必須の働きをすることを明らかにした。Rac1はさまざまな機能に関与するが、今回の結果はRac1の新たな機能を明らかにすると同時に、抗がん剤あるいは抗白血病治療薬としてのSTAT3およびSTAT5阻害剤の開発に役立つ可能性もある。

3.発表内容:
  STAT転写因子ファミリーにはSTAT1-4、STAT5A、STAT5B、STAT56の7種類が存在する。STATは、サイトカインの刺激等に反応して活性化されると2量体を形成して核に移行し、さまざまな遺伝子の発現を誘導する。なかでもSTAT3はほとんどの固形がんで、またSTAT5は多くの白血病細胞で恒常的に活性化していることで注目されている。多くの研究者により、その活性化メカニズムが研究されているが、STAT3およびSTAT5分子自体に明瞭な核移行シグナルがなく、活性化されたSTAT分子が核移行するメカニズムには不明の点が多かった。
  今回、東京大学医科学研究所先端医療研究センター細胞療法分野の川島敏行助手、北村俊雄教授らのグループは、活性化されたSTAT3およびSTAT5は低分子量G蛋白質Rac1とその調節因子MgcRacGAPと結合し、この複合体がインポーチンと呼ばれる核移行を助ける分子に結合することを初めて明らかにした。またこの複合体中でRac1がMgcRacGAPによって不活化されるとインポーチンとの結合が外れることを示唆した。
  今回の結果は当該分野の常識からは予想できないものであり、発表後は反響を呼ぶことが予想される。すでに米国のScientific writerからの取材が入っている。

4.発表雑誌:
米科学誌ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー

5.注意事項:米国で12月18日に紙上およびWeb上で公開される。日本では12月18日午後11時(日本時間)以降に情報公開が解禁。
 
6.問い合わせ先:
東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 細胞療法分野 教授 北村俊雄

7.用語解説:
STAT:インターフェロンの下流で働く転写因子として発見された。サイトカインを中心とする細胞外からの刺激によって活性化されたJAKなどのチロシンキナーゼによってリン酸化を受けると2量体を形成すると、核内に移行してさまざまな遺伝子の発現を誘導する。

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