PRESS RELEASES

印刷

「世界初の導電性と磁性を併せ持つ有機物質の発見」研究成果

「世界初の導電性と磁性を併せ持つ有機物質の発見」

1.タイトル:「世界初の導電性と磁性を併せ持つ有機物質の発見」

2.概 要:
   金属元素を含まない純粋な有機物質で、電気伝導と磁性の両方を示すばかりでなく、伝導電子と電子スピンの相互作用に基づいて負性磁気抵抗効果を示す物質を世界で初めて実現した。

3.内 容:
  日本では、有機物質の電気的、磁気的性質の研究に関しては、世界的に見ても大変高いレベルにある。赤松、井口、松永博士らによる有機半導体の発見に始まり、白川博士のポリアセチレンの導電性に関する研究が、ノーベル賞の受賞に繋がったことは、周知の事実である。
一方、有機物の磁性に関しても、伊藤、岩村、菅原博士らによる高スピン分子の発見を契機に、有機分子の磁性研究が盛んになり、日本で世界初の有機強磁性体が木下らにより発見された。次なるターゲットとして導電性を持ち、かつ磁性を持つ有機物の発見が待たれていた。
この間、鉄、コバルトなど磁性を持つ無機のイオンを取り込んだ導電性の有機物で、磁性を示す例は報告されているが、純粋な有機物で導電性と磁性を持ち、かつそれらの間に相互作用のある物質は、世界的にもまだ見つかっていなかった。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の菅原正教授は20年ほど前より、導電性と磁性を持つ有機物質の研究を続けてきたが、このほど、松下未知雄助手との共同研究により、セレン原子を持つ有機分子(ESBN)を電界酸化して得られる塩(ESBN2?ClO4)が、導電性と磁性を併せ持ち、さらにそれらの性質の間に相互作用があることを、負性磁気抵抗(物質に磁場をかけると抵抗が減る現象)の実験により確認した。

今回、発見された導電性と磁性を併せ持つ有機物質は、世界の関連分野で長らく待望されていた物質であり、かつ現在次世代のエレクトロニクスとして期待されている分子素子を用いたスピンエレクトロニクス研究の基盤となる極めて重要な発見ということができる。

4.発表雑誌:
日本化学会の英文速報誌Chemistry Letters 誌の1月号(1月10日付)に掲載。(http://www.jstage.jst.go.jp/browse/cl/36/1/_contents)

Negative Magneto-resistance Observed on an Ion-radical salt of a TTF-based Spin-polarized Donor
Michio M. Matsushita, Hironori Kawakami, Yuzo Kawada, and Tadashi Sugawara
Chem Lett., 36, 110-111 (2007).

5.問い合わせ先:
東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 教授・菅原正
URL http://pentacle.c.u-tokyo.ac.jp



アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる