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「居眠り運転防止シートを開発~座席に取り付けたセンサーにより入眠予兆を検知~」研究成果

「居眠り運転防止シートを開発~座席に取り付けたセンサーにより入眠予兆を検知~」

平成19年2月15日

鉄道・運輸機構
東 京 大 学
大 分 大 学
(財)島根難病研究所
(株)デルタツーリング

居眠り運転による交通事故発生の低減は、依然大きな社会的問題となっていますが、このほど東京大学をプロジェクトリーダーとする産学研究グループ「入眠予兆研究会」(注)と(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は、世界で初めて入眠予兆検知着座センサーによる居眠り運転防止シート(座席)を開発しました。
(注)東京大学、大分大学、(財)島根難病研究所 及び(株)デルタツーリングから構成。

この産学グループは、東京大学金子成彦教授をリーダーとし、機械工学、電気工学、医学、シート設計者からなるユニークな研究活動集団で、研究では、従来から行われてきた画像や脳波の計測では予見できない覚醒時の入眠予兆(眠くなる前の前兆)を脈波や呼吸数といった生体信号のゆらぎから検出する斬新的な方法を医学的、工学的立場から確立することを目指しました。
その結果、研究グループでは、脈波と呼吸の状態を観察すると、入眠状態になる10分程度前(疲労度に反比例して短くなります。)に一定の前兆信号が表れることを突き止め、その信号をセンサーで検知して測定することによって居眠り状態になる前に警告を発することができる運転シートを開発しました。この運転シートは次のような優れた特徴を持っています
・ シートに組み込んだ磁気回路センサーと圧力センサーにより運転手の体動、心拍数及び呼吸数を運転席に着座した状態で計測することができます。この場合、運転手は座席に通常通り座るだけで、体になんらの装置もとりつける必要はなく測定できます。
・ 自動車が一般道路を走行中と高速道路を走行中では路面から人体に伝わる振動が異なりますが、このシートのシステムは、シートの骨格と人を支持するばね系との間で振動を減衰させ、路面振動の影響がセンサー部に入り難くいので、路面の状態とは無関係に生体信号を測定することができます。
・ 生体信号を捕らえるセンサーとしては小型のものがシートに埋め込まれているので、運転シートは一般のシートと同じ大きさのものとなりました。

またこのグループの研究では、この開発のベースとなる基礎研究の成果として、次のような点も明らかにしました。
・ 入眠前の筋肉運動量が大きいほど、入眠潜時(入眠予兆が現れて入眠状態になるまでの時間)が短くなることを医学的に明らかにしました。
・ 人が座席に着座した状態で覚醒状態を維持し、肉体的・精神的に疲労の少ない着座姿勢としては、背もたれ角度33度が最もリラックスした姿勢であることを検証しました。

さらに現在、入眠予兆と同じく、飲酒状態で現れる特徴的な脈派や呼吸状態などの生体信号の解明にも取り組んでおり、この信号を測定することにより飲酒状態で着座すると始動しないようなシステムとすることも可能となります。研究グループでは、今後、飲酒運転防止シートについても開発をしていくことにしています。

なお、この研究の成果は、3月5日(月)に開催する「交通機関における居眠り事故防止を目指した入眠予兆シンポジウム」(東京大学武田先端知ビルにて入眠予兆研究会及び鉄道・運輸機構の共催。プログラムなど詳しくは別紙2に掲載。)で詳細を発表します。同シンポジウムでは、この運転シートの実物も公開する予定です。
図

 居眠り運転防止シート(着座センサー付き)

【問合せ先】
研究内容及びシンポジウムに関して:
東京大学大学院工科系研究科
機械工学専攻 教授    金子成彦

研究制度に関して:
鉄道・運輸機構
研究開発部 基礎研究課長  奥村耕之

研究内容
http://knock.t.u-tokyo.ac.jp/

交通機関における居眠り事故防止を目指した入眠予兆シンポジウムの開催について

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