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記者会見「大学院情報学環における『電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座』の設置について」記者発表

記者会見「大学院情報学環における『電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座』の設置について」

平成19年4月26日
国立大学法人 東京大学 大学院情報学環
株式会社 電 通

東京大学は電通からの寄付を受け
大きく変化するメディア・コミュニケーションのエコシステム(生態系)を総合的に研究するために
「電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座」 を東京大学大学院情報学環に設置

国立大学法人東京大学(本部:東京都文京区、総長:小宮山宏)は、株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役社長:俣木盾夫)からの寄付を受け、急速に大きな構造変化を遂げつつあるメディア環境・コミュニケーション環境を背景に、メディアや広告が担う経済価値の変化、人々のコミュニケーション行動やメディア文化の変容、メディア制度の変化、さらに、情報発信の倫理やジャーナリズム、情報通信技術と社会の関係のあり方などを、総合的な視野にたって研究するため、「電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座」を東京大学大学院情報学環に設置しました。寄付金額は3年間で5,000万円です。
「電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座」における研究教育活動は、情報学環の若手研究者を中心に、平成19年度から平成21年度までの3年間にわたって実施される予定です。電通および電通グループは、この寄付講座の活動を支援するとともに、その研究成果の社会的還元にも積極的に協力を行います。
また、この寄付講座のテーマが総合的・構造的なものであることから、オープンな研究教育活動を旨とし、今後、電通だけでなく、新聞・雑誌・放送業界、通信・ネット業界、広告主企業、関連企業などにも、この講座への協力や参加を幅広く求めていく予定です。

○ 研究目的について

この寄付講座の研究目的は次の通りです。
急速な情報通信の技術革新やメディア産業の変化、情報のユビキタス化、人々のメディア消費行動の変化等により、社会におけるメディアやコミュニケーションのあり方は、これまでに経験したことのないような大きな構造変革期を迎えつつあります。今後長期に及ぶであろう、こうした大変動を、「コミュニケーション・ダイナミクス」と呼んでいるわけですが、それによって新しい多様なコミュニケーションの可能性が開かれるとともに、これまでのメディアの価値創出の基盤となっていた、様々なステイクホルダーの交替や相互の関係性が変化し、メディアがこれまで有してきた経済価値や社会価値等の変動が生じつつあります。
そこで、これまでのメディアやコミュニケーションのエコシステム(生態系)を支えてきた基本的な価値基準に着目して、その内容を見直し、デジタルメディア時代に相応しいメディアやコミュニケーションの新しい価値のあり方を総合的に検討します。
こうした活動を通じて、この寄付講座は、新しい時代のメディア・コミュニケーション研究の融合と俯瞰の場になることを目指します。

○ 研究課題について

デジタルメディア時代に相応しいメディアやコミュニケーションの新しい価値基準のあり方を、経済価値、倫理価値、文化価値、テクノロジーの4つの柱を中心に分析し設計します。この際に、それぞれをばらばらに研究するのではなく、新聞研究所・社会情報研究所時代を通じて培われ、さらに情報学環との合併において格段の広がりを得た、情報学環におけるメディア・コミュニケーション研究の学際的な幅の広さを活用し、また時代の変化を鋭敏に捉える若手研究者の感覚や斬新な視点を足場として、メディアやコミュニケーションの生態系の変化を構造的かつ総合的に研究します。
情報通信テクノロジーの変化に促された情報生産や伝達の様式変化、その担い手である産業の動向、人々の情報認知の変容などを捉え、それらをもとに、デジタル時代におけるメディアやコミュニケーションが担う経済価値、倫理価値(制度)や文化価値の内容変化を分析し、複雑多様なデジタル時代のコミュニケーションが支える社会の様式変化の全体像を把握するとともに、それらの価値の調和的な構造のあり方を提案します。
この寄付講座において当面取組みが想定されているテーマは、例えば次のようなものです。新たな研究課題の開発そのものも、この寄付講座の目指すところです。

・ コミュニケーション投資と企業価値
・ 地域コミュニティにおけるコミュニケーション・ダイナミクス
・ サブカルチャー資本と政治的志向性・情報行動
・ 広告とメディアリテラシー
・ 集団的コンテンツ創造の環境条件
・ 合意形成に向けた認知・情報行動の解明
・ デジタル・ネットワーク時代の知的財産・個人情報保護
・ 印刷・通信・放送の融合化と法整備

(参考)
I.経済価値基準   ・・・メディア価値、広告アカウンタビリティなどの基準のあり方
II.倫理基準      ・・・ジャーナリズム、制度、消費者発信コンテンツなどのあり方
III.文化基準      ・・・娯楽、教育、文化などのコミュニケーションのあり方
IV.テクノロジー基準 ・・・技術革新、互換性、社会的普及などのあり方

○ 期待される成果について

この寄付講座によって期待される成果としては、メディアやコミュニケーションの広範な関連領域における産業構造・社会構造や人々の意識・文化・倫理の変化などを俯瞰的かつ横断的にとらえることで、断片的な議論がなされがちな将来の社会的コミュニケーション構造に関して動態的かつ総合的な設計を行うことが可能となるとともに、幅広い研究のためのネットワーク拠点が形成されるものと考えています。
この寄付講座は、メディアやコミュニケーション研究の分野において大学と産業との協働のあり方を探る「場」としても、新たな試みとなります。大学側からすれば、変化の激しい現場の情報や感覚をストレートに入手し刺激を受けて体系的な理論研究に反映させるととともに、産業側からすれば、個別的事象や利害関係を離れて将来のメディア・コミュニケーション環境を総合的かつ理論的に考え議論するきっかけになると考えられます。レトリック的に言えば、こうした相互的な交渉を想定した研究活動自体が、「コミュニケーション・ダイナミクス」という性格を持つことになるでしょう。
なお、成果の公表は、シンポジウムや刊行物、寄付講座のサイト等で行うとともに、研究成果を活用した講義も実施します。また、公開の研究フォーラムも開催する予定です。

○ 寄付講座担当研究者について

この寄付講座を担当する教員は、寄付講座教員である濱田純一 (教授 専門分野:情報法、情報政策)、清原聖子(客員教員(助教相当) 専門分野:政治コミュニケーション)のほか、以下のとおりです。
石崎 雅人  (准教授  専門分野:コミュニケーションの科学) 
田中 秀幸  (准教授  専門分野:ネットワーク経済)
水越 伸    (准教授  専門分野:ソシオ・メディア論)
林  香里   (准教授  専門分野:ジャーナリズム論)
山口 いつ子 (准教授  専門分野:表現の自由、サイバー法)
北田 暁大   (准教授  専門分野:メディア社会学)
樺島 榮一郎 (助教  専門分野:情報経済、知的財産)

○ 「電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座」の概要

名称:電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座
研究機関:東京大学大学院情報学環
設置年月:平成19年度(2007年4月)~平成21年度(2010年3月)
研究内容:メディアやコミュニケーションの変容に伴う、それらの経済価値、倫理価値、文化価値、テクノロジーに関する課題の学際的総合研究

○ 東京大学大学院情報学環について

名称:東京大学大学院情報学環・学際情報学府
設置年月:2000年(平成12年)4月
位置づけ:学校教育法第66条に定める「研究科以外の教育研究上の基本となる組織」として、東京大学大学院に「情報学環」及び「学際情報学府」が設置された。
「情報学環」と「学際情報学府」が両者一体となって構成されるこの大学院組織は、専門深化と恒常性を基本的な特質とする従来の研究科の限界を超えて、全学にわたる情報関連の諸領域をネットワーク的に連携させる横型の組織として設置され、情報学分野の総合的な教育研究を先端的かつダイナミックに推進するにふさわしい形態を備えている。
組織沿革:1929年10月 東京帝国大学(当時)文学部に学術研究施設として「新聞研究室」設置
1949年5月 正式な東京大学附置研究所として「東京大学新聞研究所」を設置
1992年4月 「東京大学新聞研究所」をマス・コミュニケーション研究から社会情報の総合的研究に発展させた「東京大学社会情報研究所」を設置
2000年4月 東京大学大学院「情報学環」・「学際情報学府」を設置
2004年4月 新聞研究室以来、約75年にわたる東京大学における新聞研究、マスコミ研究、社会情報研究の蓄積と拡大を基盤に、社会情報研究所を大学附置研究所から大学院組織へと移行し、大学院情報学環・学際情報学府と合併

■本件に関するお問い合わせ
国立大学法人東京大学 大学院情報学環 事務長 福田幸雄
株式会社電通 広報室広報部 市川剛

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