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水素ガスパイプラインの実大強度試験に世界で初めて成功研究成果

水素ガスパイプラインの実大強度試験に世界で初めて成功

1.発表概要:
  東京大学とノルウェーの研究機関SINTEFの研究グループは、高圧水素ガスパイプラインの実大破壊強度試験を世界で初めて実施し、水素パイプラインは天然ガスパイプライン以上の「き裂抑制効果」を有することを実証した。

2.発表内容:
  東京大学とノルウェーの研究機関SINTEFの研究グループは、高圧水素ガスパイプラインの実大破壊強度試験を世界で初めて実施し、水素パイプライン安全性の検証を行った。
  将来の水素社会実現のために、燃料電池、水素製造、水素輸送と貯蔵等、多方面からの研究開発が実施されているが、本研究は水素輸送技術に関するものである。水素の輸送方法には液体水素タンク、水素吸蔵合金利用等があるが、大量・長距離輸送には、高圧ガスパイプラインによる輸送が最も適していると考えられている。特に、天然ガスパイプラインを使用できれば、インフラ投資を大幅に削減することができるので、水素社会の実現を早めることができるものと期待されている。
  今回の実験は、研究リーダーの東京大学粟飯原教授が計画し、SINTEFとの共同研究によりノルウェー国内で実施された。直径27cm、長さ35mの高張力鋼管に120気圧の水素ガスを充填した状態で鋼管中央部に長さ30cmのきずを人工的に導入し、このきずからき裂がどの程度伝播するかを測定した。比較として同圧力の天然ガス(主成分はメタン)についても実験を行った。き裂は約200m/秒の速度で伝播したが、天然ガスの試験に較べて水素ガスの試験のほうがき裂が短距離で停止した(天然ガスで約90cmに対して水素ガスで約50cm)。同時に、鋼管中の圧力変化も測定した。き裂の伝播に伴って鋼管内部の圧力が低下したが、水素ガスのほうが圧力低下が急速であった。水素ガスの音速は天然ガスの約3倍であり、水素ガスのほうが圧力の急激低下によってき裂を伝播させる力が早期に減少したことが水素ガスの試験でき裂が短距離で停止した理由であると考えている。
  地中に埋設される水素ガスパイプラインが、万一、他工事などにより損傷を受けた場合に、損傷部から発生したき裂の拡大を抑制して鋼管の破壊を最小限に食い止めることが必要である。今回の結果は、水素ガスパイプラインは天然ガスパイプライン以上のき裂抑制効果を有することを世界で初めて実証したものであり、天然ガスパイプラインを水素ガスパイプラインとして適用できる可能性を示すものである。将来の水素社会におけるパイプラインによる水素の大量・長距離輸送の可能性を示唆するものと考えている。今回の実験は比較的小口径の鋼管を用いたものであり、水素の大量輸送で想定される大口径鋼管について実験検証を行うとともに、鋼管材料の水素脆化に関する評価も併せて実施し、水素ガスパイプラインの安全技術を総合的に構築していく必要がある。
  この共同研究は、NEDOからの受託研究(水素安全利用等基盤技術開発水素に関する共通基盤技術国際共同研究)として行われたものである。

3.発表雑誌:
  パイプライン専門雑誌に投稿を計画中。

4.問い合わせ先:
  東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻 教授 粟飯原周二

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