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広く染色体に見られるヘテロクロマチン構造の主要な役割を発見研究成果

広く染色体に見られるヘテロクロマチン構造の主要な役割を発見

1.タイトル
広く染色体に見られるヘテロクロマチン構造の主要な役割を発見

2.発表概要
東京大学分子細胞生物学研究所の山岸有哉(大学院理学系研究科博士課程1年)と渡邊嘉典教授らは、広く染色体に見られるヘテロクロマチンの最も重要な役割が、染色体の接着を守る因子シュゴシンを呼び寄せることにあることを見出した。

3.発表内容
細胞の染色体(注1)は遺伝情報(ゲノム)を担うことで知られている。細胞が分裂して増殖する過程で、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配されることが重要である。このとき、複製した染色体の動原体(注2)が分裂装置であるスピンドル微小管によって反対方向から捕らえられたことを確かめるためには、複製された染色体が動原体のところで強固に接着していることが必要である(図参照)。先の2004年に渡邊教授らは、染色体の接着を守る働きをするシュゴシン・タンパク質を見出していた。本研究では、動原体の周辺領域に形成されるヘテロクロマチン(注3)の主要構成因子HP1タンパク質がシュゴシンと直接相互作用することを見出し、さらに、ヘテロクロマチンの主要な役割がシュゴシンを動原体周辺に局在化させることにあることを発見した。この結果は、酵母の細胞を用いて発見されたことであるが、ヒトの細胞などにも広く保存された染色体のもつ本質的なメカニズムであることも合わせて示した。本研究の成果は、染色体研究において長い間なぞであったヘテロクロマチンの役割を明確にした点において大きな進展であり、染色体分配異常によるがんの発症機構あるいはダウン症(注4)などの原因解明に役立つと期待される。

4.発表雑誌
この研究は英国科学雑誌「Nature」のオンライン版に8月17日(英国時間18:00)に発表される。Yamagishi, Y., Sakuno T., Shimura, M. and Watanabe, Y. ; Heterochromatin links to centromeric protection by recruiting shugoshin. Nature 10.1038/nature07217 (2008)

5.注意事項
報道解禁日時は:平成20年8月18日午前2時
(新聞は平成20年8月18日付け朝刊から)

6.問い合わせ先
(研究に関して)
東京大学分子細胞生物学研究所
教授 渡邊嘉典(わたなべ よしのり)
大学院生 山岸有哉(やまぎし ゆうや)(大学院理学系研究科博士課程1年) 
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/watanabe-lab/

7.用語解説
(注1)染色体:遺伝情報を担うDNAとタンパク質の構造体。ヒトの細胞では、父親と母親に由来する23組46本の染色体をもつことが知られている。
(注2)動原体:染色体の中心部分に存在して、染色体の分配のときに引っ張られる部位。
(注3)ヘテロクロマチン:核内DNAのうち高度に凝縮した不活性な部分で、その主要な役割は不明であった。動原体周辺部位以外にも、染色体末端、X染色体などにも見られる。
(注4)ダウン症:ヒトの先天性疾患で、減数分裂の染色体分配のミスにより21番染色体が1本余分に子供に受け継がれたときに起きる。

添付資料:
通常の細胞(左)に比べ、ヘテロクロマチンを欠損させた細胞(右)では、染色体の動原体部分が離れてしまう。シュゴシンの局在が無くなったためである。

図

 

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