「就学前児における前頭前野の機能的発達」研究成果

「就学前児における前頭前野の機能的発達」
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1.発表者:
開 一夫(東京大学大学院情報学環/大学院総合文化研究科 准教授)
森口佑介(東京大学大学院情報学環 研究員)
2.発表概要:
我々は、近赤外分光法(*1)を用いて、就学前期における発達的脳機能変化の計測に成功した。特に、幼児期の子どもが示すこだわり行動(*2)と前頭前野外側部(*3)の活動との間に強い関連があることを解明した。3歳から5歳までの就学前児を対象とした前頭前野脳機能の発達の計測は、世界ではじめての試みである。
3.発表内容:
心理学的研究から、3歳から5歳の間に、認知能力が著しく発達することが知られている。こうした認知能力の発達と前頭前野の機能的発達との関連性が指摘されてはいたが、推測の閾を脱していなかった。我々は、近赤外分光法を用いて、認知課題中の3歳児と5歳児の前頭前野の活動を計測した。その結果、こだわり行動を産出した3歳児の脳活動とその傾向がほとんどなかった5歳児の脳活動の間に著しい違いを見出した。今後、研究が進めば、前頭前野の機能不全との関係が示唆されているADHD(*4)に関する研究や、脳神経科学的エビデンスに基づいた効果的教育方法の開発に結びつく可能性がある。
4.発表雑誌:
米国科学アカデミー紀要電子版 3月30日付に掲載
5.注意事項:
なし
6.問い合わせ先:
東京大学大学院情報学環/大学院総合文化研究科
准教授 開一夫
東京大学大学院情報学環
研究員 森口佑介
7.用語解説:
(*1)近赤外光の性質を応用して脳活動を計測する手法
(*2)何かある行動をすると、別の行動をすべきときも、最初の行動に固執し続けてしまう様
(*3)成人の研究から、思考や意思決定などとの関連が明らかになっている脳部位
(*4)発達障害・行為障害の1つである注意欠陥多動性症候群