記者会見「染色体を動かす装置である動原体の方向づけのメカニズムを解明」研究成果

記者会見「染色体を動かす装置である動原体の方向づけのメカニズムを解明」
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1.発表日時:平成21年4月14日(火)15:00~16:00
2.発表場所:東京大学分子細胞生物学研究所 生命科学総合研究棟3階
302号室会議室(弥生キャンパス内:文京区弥生1-1-1)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_07_09_j.html
東京メトロ南北線東大前下車5分
3.発表者:渡邊嘉典(東京大学分子細胞生物学研究所 教授)
4.発表概要:
東京大学分子細胞生物学研究所(所長:秋山徹)の染色体動態研究分野の作野剛士特任助教と渡邊嘉典教授らは、細胞分裂のときに染色体を分配する過程で、染色体の中心部分(動原体)で分配方向を決める分子メカニズムを解明した。
5.発表内容:
細胞の染色体(注1)は遺伝情報(ゲノム)を担うことで知られている。体細胞の染色体分配のときは、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要である。ここで間違いが起きることが、ガン細胞が生まれる一つの主要原因と考えられている。一方、生殖細胞で精子や卵子を形成するときに見られる染色体を半分に減らす分裂は減数分裂と呼ばれ、体細胞の分裂と明確に区別される。減数分裂では、複製された染色体の動原体が同じ方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要である。ここでの間違いは、ダウン症(注2)の原因になることが知られている。このように、染色体を分配するときの方向は正確に制御される必要があるが、その分子メカニズムは謎につつまれ、生物学の大問題であった。今回、酵母を用いた研究で、2つの染色体の動原体の中央部分を接着させることにより動原体が同じ方向を向き、動原体の中央部分を離してその近傍を接着させることにより、動原体を反対方向へ向かせているという分子メカニズムが明らかになった(別紙図参照)。本研究の成果はヒトを含めたすべての生物に通じる根本原理であるため、染色体分配の間違いに起因するヒトの病気の原因解明にもつながる、きわめて重要な発見と考えられる。
6.発表雑誌:
英国科学雑誌 Nature 4月16日号(印刷版)にArticleとして掲載される。
7.注意事項:
解禁日時:[テレビ、ラジオ等]平成21年4月16日午前2時
[新聞]平成21年4月16日付け朝刊
8.問い合わせ先:
渡邊 嘉典(わたなべ よしのり)
東京大学分子細胞生物学研究所 教授
作野 剛士(さくのたけし)
東京大学分子細胞生物学研究所 特任助教
9.用語解説:
[用語説明]
(注1)染色体:遺伝情報を担うDNAとタンパク質の構造体。ヒトの細胞では、父親と母親に由来する23組46本の染色体をもつことが知られている。
(注2)ダウン症:ヒトの先天性疾患で、減数分裂の染色体分配のミスにより21番染色体が1本余分に子供に受け継がれたときに起きる。
10.添付資料: