記者会見「ナトリウム・カリウムポンプの立体構造の解明」研究成果

記者会見「ナトリウム・カリウムポンプの立体構造の解明」
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平成21年5月15日
報道関係各位
東京大学分子細胞生物学研究所
財団法人高輝度光科学研究センター
記者会見「ナトリウム・カリウムポンプの立体構造の解明」
1.発表日時:平成21年5月19日(火)14:00~15:00
2.発表場所:東京大学分子細胞生物学研究所 生命科学総合研究棟3階
302号会議室(弥生キャンパス内:文京区弥生1-1-1)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_07_09_j.html
東京メトロ南北線東大前下車5分
3.発表者:東京大学分子細胞生物学研究所 生体超高分子研究分野
教授 豊島 近
4.発表概要:
大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL41XUを用いて、心不全の治療薬ジギタリスの標的分子でもあり、神経の興奮などに必須なナトリウム・カリウムポンプの立体構造を世界で初めて解明することに成功した。
5.発表内容:
すべての動物細胞では細胞の内と外でナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)等のイオンに関し濃度差が保たれており、この濃度差が生命活動の原動力ともなっている。例えば、「神経が興奮する」という現象は、細胞の外に多いNa+が、濃度差に従って細胞内に流入することで「活動電位」という電気信号が生じることがその実体である。一方、興奮によって失われたイオンの濃度差をもとに戻すのがイオンポンプ蛋白質の働きである。今回発表する研究で構造が決定されたのはNa+, K+に対するポンプ蛋白質であり、ATPのエネルギーを利用してNa+を細胞内から外へ、K+を外から内へと運搬する。同族には、やはり豊島教授グループが構造を決定したCa2+ポンプがある。Na+, K+ポンプを発見したデンマークのスコウ(Jens C. Skou)に1997年のノーベル化学賞が授与されたほど重要な蛋白質である。このポンプは、強心剤として200年以上前から処方されているジギタリス類の標的蛋白質であり、心不全に深く関わる他、高血圧やがんとの深い関わりも明らかになって来たため、新たな治療薬の標的としても注目されている。今回、その原子構造が決定されたことによって薬剤の開発は大きく前進することが期待される。
なお、この研究は科学研究費補助金・特別推進研究(イオン輸送体の構造生物学)及びSPring-8 長期課題(膜輸送体作動メカニズムの結晶学的解明)によるものである。
6.発表雑誌:ネイチャー5月21日号
7.注意事項:報道解禁は日本時間5月21日午前2時となります。
この時間以前には報道しないようご注意下さい。
8.問い合わせ先:
東京大学分子細胞生物学研究所 生体超高分子研究分野
教授 豊島 近(とよしま ちかし)
※図はこちらからダウンロード可能です。