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世界初!材料中の原子1個を3次元観察する顕微鏡法-ナノテクノロジー・材料開発に拍車-研究成果

世界初!材料中の原子1個を3次元観察する顕微鏡法-ナノテクノロジー・材料開発に拍車-

報道関係者 各位


世界初!材料中の原子1個を3次元観察する顕微鏡法
-ナノテクノロジー・材料開発に拍車-


【発表概要】
 東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構 柴田直哉 助教(独立行政法人科学技術振興機構(以下、JST)さきがけ研究員)、幾原雄一 教授(財団法人ファインセラミックスセンターナノ構造研究所、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR))らの研究グループは、材料中に存在する原子1個を3次元的に観察する顕微鏡手法を開発し、結晶界面上のドーパント原子の規則配列を直接観察することに世界で初めて成功しました。本成果は、これまで2次元的な原子構造情報に留まっていた従来の電子顕微鏡法を3次元顕微鏡法に発展させる画期的な研究成果で、今後のナノテクノロジー研究の推進に拍車がかかることが期待されます。
 本研究の成果は2009年6月22日発行の英国科学雑誌「Nature Materials」オンライン版で公開されます。


【発表内容】
 原子や分子を3次元的に自由に組み合わせて新しい材料創出を目指すナノテクノロジー開発分野では、原子レベルの顕微鏡技術が極めて重要な役割を果たしています。透過型電子顕微鏡法(TEM)は、材料内部の原子構造を直接観察できることから現在広く応用されていますが、原子列を影絵のように2次元に投影して観察するため、3次元的に複雑な原子構造の解析には不向きであるとされてきました。しかし、今後ナノテクノロジー開発を促進していくためには、複雑なナノ構造を原子レベルで3次元的に観察する顕微鏡法の開発が急務とされていました。そのような背景のもと、世界中の研究者がしのぎを削ってその手法の開発研究を進めています。
 今回、東京大学の柴田直哉助教、幾原雄一教授らの研究グループは最先端の原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)をベースとした原子レベルの3次元構造観察手法を世界に先駆けて開発しました。本手法は、超高精密度な試料作製技術と観察像の理論計算を組み合わせることによって実現しました。その精密度は、エベレスト山(標高8848m)にはさみこまれた紙一枚を山の上下から掘って探り当てるレベルに匹敵します。また、理論計算により、あらかじめ試料の厚さや観察条件(フォーカス)を把握し、その条件で観察することにより、原子レベルまで細く絞りこんだ電子線の試料内部での電子の広がりを抑え、3次元観察が可能になることが示されました。本手法により、材料内部の界面上に埋め込まれたドーパント原子1個1個を直接観察することに成功し、その規則的な配列を世界で初めて明らかにしました。本成果は、2次元的な原子構造情報に留まっていた従来の顕微鏡法を3次元顕微鏡法に発展させる画期的な研究成果であるとともに、今後のナノテクノロジー・材料開発を強力に推進すると考えられます。
 本研究の一部は、文部科学省特定領域研究「機能元素のナノ材料科学」(領域代表者:東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構 幾原雄一教授)、JST戦略的創造研究推進事業個人型研究さきがけ「界面の構造と制御」(研究総括:東京大学大学院新領域創成科学研究科 川合眞紀教授)及び新エネルギー・産業技術総合開発機構平成19年度産業技術研究助成事業の支援により行われました。


【発表雑誌】
Nature Materials、6月22日 電子版


【問い合わせ先】
柴田 直哉(シバタ ナオヤ)助教
幾原 雄一(イクハラ ユウイチ)教授
東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構 
〒113-8656 東京都文京区弥生2-11-16

【用語解説】
・ナノテクノロジー
  ナノメートル(10億分の1メートル)のレベルで物質の構造や配列を制御し、新しい材料・デバイスを開発する工学技術。
・原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)
  0.1ナノメートル(1オングストローム)以下程度まで細く収束させた電子線を試料上で走査し、試料により透過散乱された電子線の強度で、試料中の原子位置を直接観察する装置
・ドーパント
  材料の特性向上を目指して、極微量に添加する元素。界面などの格子欠陥領域に偏析して、材料特性を大きく変化させる機能を持つ。

【添付資料】  別紙(研究成果の詳細:計6ページ)

 

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