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「ストレス応答の調節にかかわる新しいタイプのタンパク質脱リン酸化酵素の発見」研究成果

「ストレス応答の調節にかかわる新しいタイプのタンパク質脱リン酸化酵素の発見」

1.発表者:
武田弘資准教授、一條秀憲教授(東京大学大学院薬学系研究科)

2.発表概要:
  細胞レベルでの様々なストレスに対する応答は、多くの分子から構成される細胞内の情報伝達機構によって精緻に調節されています。今回、その調節にかかわるタンパク質として新たにPGAM5という分子を発見し、この分子が新しいタイプのタンパク質脱リン酸化酵素として機能することを発見しました。

3.発表内容:
  東京大学大学院薬学系研究科の武田弘資准教授、一條秀憲教授らの研究グループは、細胞のストレス応答において重要な役割を担っているASK1というタンパク質リン酸化酵素についての研究過程で、新たにPGAM5という分子がASK1に結合し、ストレス応答の際にASK1が調節する二つの主要な細胞内情報伝達経路を活性化する働きを持つことを見いだしました。さらに、どのようなメカニズムでそのような活性化を引き起こすかを検討したところ、PGAM5にはタンパク質中のセリンとスレオニンという二つのアミノ酸に対する脱リン酸化酵素活性があり、その活性を用いてASK1の酵素活性を上昇させることが分かりました。
  タンパク質の機能は、それぞれの分子を構成するアミノ酸が様々な修飾を受けることによって調節されますが、リン酸化修飾はその代表的なものです。リン酸化されたセリンとスレオニンに対して特異的に働く脱リン酸化酵素としては、大きく三つのファミリーに分類される酵素群がすでに知られており、それらでセリンとスレオニンに対する脱リン酸化反応はすべて賄われていると長らく考えられてきました。しかし、PGAM5はそのような既知の酵素とはまったく異なる構造を持つことから、今回の発見によりタンパク質脱リン酸化酵素というカテゴリーそのものを見直す必要が出てきました。
  細胞のストレス応答に異常が生じると、生活習慣病をはじめとする様々な疾患につながります。今回発見したPGAM5の機能をさらに詳しく調べていくことで、ストレス応答の調節機構と疾患との関連も明らかになるものと期待されます。

4.発表雑誌:
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
(米国科学アカデミー紀要)
“Mitochondrial Phosphoglycerate mutase 5 uses alternate catalytic activity as a protein serine/threonine phosphatase to activate ASK1”
Kohsuke Takeda1, Yoshiko Komuro1, Teruyuki Hayakawa1, Haruka Oguchi1, Yosuke Ishida1, Shiori Murakami1, Takuya Noguchi1, Hideyuki Kinoshita1, Yusuke Sekine1, Shun-ichiro Iemura2, Tohru Natsume2, and Hidenori Ichijo1
1 東京大学 大学院薬学系研究科 生命薬学専攻 細胞情報学教室
2 産業技術総合研究所 バイオメディシナル情報研究センター

5.注意事項:
  解禁日時:日本時間平成21年7月7日午前6時
  論文は7月6日から10日にオンラインで公表予定。

6.問い合わせ先:
  武田 弘資 准教授
  一條 秀憲 教授
  〒113-0033 文京区本郷7-3-1
  東京大学 大学院薬学系研究科 生命薬学専攻 細胞情報学教室

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