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血管の防御にかかわるダウン症の原因遺伝子を解明-ダウン症患者の血管性疾患の低さに関係か-研究成果

血管の防御にかかわるダウン症の原因遺伝子を解明-ダウン症患者の血管性疾患の低さに関係か-

今般、東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区、宮野健次郎所長)の南敬特任准教授らの研究グループ(システム生物医学分野)は、ダウン症候群関連遺伝子が、がんや炎症がある場合に、血管の異常を察知することで同遺伝子の働きが活発化、血管新生(血管が新たに形成されること)や炎症を防ぐ役割を持っていることを明らかにしました。

■注意事項:
Journal of Clinical Investigation誌に7月13日に掲載予定のため、解禁は、日本時間7月14日午前6時以降となります。(新聞は7月14日夕刊)

■日時:7月9日(木)16時~17時

■場所:東京大学先端科学技術研究センター4号館3階317号室
 
■概要
  ダウン症は、21番染色体が健常人では2本のところ、1本多い3本(トリソミー)になることが原因で発症し、遺伝病の中では最も高い頻度(700分の1の確率)で発生しています。症状としては、精神遅延が知られていますが、その一方で、これまでの疫学データから、ダウン症患者が固形がん(白血病などの血液がん以外のがん)にかかる率が著しく低く、かつ動脈硬化などの血管性疾患の危険性も、とても低いことが示されていましたが、これまではその原理が不明でした。
今回の南特任准教授らの研究では、ダウン症候群関連遺伝子 (DSCR-1) が、がんや炎症による血管の異常を察知して活性化すること、そしてDSCR-1がないマウスでは、血管の防護が出来ず、体内に細菌が入る敗血症などのショックを与えると早期に死亡してしまうことを証明し、The Journal of Clinical Investigation(2009年8月号)誌上で発表しました。

なお、ダウン症に関連する21番染色体が通常の2コピーに対して、ダウン症の場合は3コピーあり DSCR-1 が増えるため、血管新生ができにくく、がんの成長が遅くなることは東京大学とハーバード大学の共同研究による成果として、6月25日付のNature誌で発表されています。
今後、DSCR-1 の抗炎症、抗がん作用の機構解明から新たな血管性疾患治療薬開発へ繋がることが期待されます。

■論文 
<関連論文>
The Down syndrome critical region gene 1 short variant promoter directs vascular bed-specific gene expression during inflammation in mice
Takashi Minami, Kiichiro Yano, Mai Miura, Mika Kobayashi, Jun-ichi Suehiro, Patrick C. Reid, Takao Hamakubo, Sandra Ryeom, William C. Aird, and Tatsuhiko Kodama
Journal of Clinical Investigation (August 2009)

Down’s syndrome suppression of tumour growth and the role of the calcineurin inhibitor DSCR1
Kwan-Hyuck Baek, Alexander Zaslavsky, Ryan C. Lynch, Carmella Britt, Yoshiaki Okada, Richard J. Siarey, M. William Lensch, In-Hyun Park, Sam S. Yoon, Takashi Minami, et al.
Nature (20 May 2009)

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/abs/nature08062.html

■本件問い合わせ先 
国立大学法人 東京大学先端科学技術研究センター
システム生物医学 南敬特任准教授
http://www.lsbm.org/

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