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記者会見「大脳ニューロンが生後に作られなくなる仕組みを解明-再生医療へ道」研究成果

記者会見「大脳ニューロンが生後に作られなくなる仕組みを解明-再生医療へ道」

平成21年9月7日

報道関係各位

東京大学分子細胞生物学研究所

記者会見の開催について

1.発表日時:平成21年9月9日(水)15:00 ~ 16:00  

2.発表場所:東京大学 分子細胞生物学研究所 生命科学総合研究棟3階
         302号会議室(弥生キャンパス内:文京区弥生1-1-1)
         http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_07_09_j.html
         東京メトロ南北線東大前下車5分

3.発表タイトル:「大脳ニューロンが生後に作られなくなる仕組みを解明-再生医療へ道」

4.発表者:東京大学分子細胞生物学研究所 情報伝達研究分野
        教授 後藤 由季子
        助教 平林 祐介

5.発表概要:
  哺乳類の大脳皮質のニューロンは主に胎児期に作られ、生後になるとほとんど追加されません。今回、大脳の神経幹細胞において、ポリコーム分子群というタンパク質複合体がニューロン産生能力を生後に抑制する原因であることを世界で初めて見いだしました。この発見は、幹細胞が色々な細胞に分化出来る能力を持つ仕組みの解明や、再生医療におけるニューロンの効率的な産生を可能にする成果だと期待されます。

6.発表内容:
  大脳皮質は哺乳類の高度な生命機能を司る器官で、脳内ではニューロンにより複雑なネットワークが作られています。この複雑なネットワークが正確に構成される為には、ネットワークの素子となるニューロンの数が厳密に制御されていると考えられます。ニューロンは発生期の一定期間に神経幹細胞と呼ばれる幹細胞から作られます。この時、産生期間が長ければニューロンが過剰になり、短すぎればニューロンが不足すると考えられます。今回、神経幹細胞がニューロン産生を止める時期の決定に、ポリコーム分子群が必須の役割を果たしていることを明らかにしました。
  大脳皮質の神経幹細胞は発生が進むにつれニューロンを産み出す能力を失ってニューロンの産生を終了し、グリア細胞(アストロサイトなど)のみを産み出すようになります。ポリコーム分子群はエピジェネティック1)に遺伝子の発現を制御する分子ですが、このポリコーム分子群を構成する分子を無くした神経幹細胞においては、発生が進んでもニューロン分化能が失われませんでした。その結果、ポリコーム分子群2)を持たないマウスの大脳においてはニューロンが作られ続け、過剰なニューロンが産生されました。過剰に作られたニューロンは結局ネットワークに組み込まれることなく死んでいきます。
  今回の成果は、幹細胞が様々な細胞を産み出せるのはなぜかという疑問の解決に寄与する可能性があります。また、ニューロンが失われるような疾患に対する幹細胞を用いた治療の実現に貢献する成果だと期待されます。
 
7.発表雑誌:
Neuron 9月9日号に掲載予定

8.注意事項:
報道解禁は日本時間 9月10日(木)午前1時
(米国東部標準時間 9月 9日(水)正午)となります。
この時間以前には報道しないようご注意下さい。

9.問い合わせ先:
<研究に関すること>
東京大学分子細胞生物学研究所
教授 後藤 由季子 (ごとう ゆきこ)

10.用語解説:
1)エピジェネティック:ゲノムシークエンスによらず、細胞分裂を経てもその情報が維持される遺伝子発現制御様式を表す。ヒストン修飾、DNAのメチル化が主なメカニズム。
2)ポリコーム分子群:エピジェネティックな遺伝子発現制御を担う分子群の一つ。ヒストンの修飾を介して遺伝子発現を抑制する。ES細胞の多分化能の維持などで中心的役割を果たす。

11.添付資料:
【図1】
図1

【図2】

図2

野生型マウスの発生中期においては、ニューロン分化誘導因子存在下で神経幹細胞はニューロンへと分化する。しかし、発生後期になるとニューロン分化誘導因子が存在してもニューロン分化しなくなってしまう(図2上)。ポリコーム分子群を欠損させると、発生後期でもニューロン分化誘導因子があればニューロンを産み出すことができた(図2下)。

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