記者会見「2型糖尿病の新規リスク遺伝子の発見~インスリン分泌に関わり、アジア人患者と欧米人患者における体型の差にも寄与か~」研究成果
記者会見「2型糖尿病の新規リスク遺伝子の発見~インスリン分泌に関わり、
アジア人患者と欧米人患者における体型の差にも寄与か~」
1.発表日時: 2009年 12月 25日(金曜日) 15:30 ~ 16:30
2.発表場所: 医学部教育研究棟13階第8セミナー室
3.発表者:
徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野 教授)
岩﨑 直子(東京女子医科大学 第3内科学・糖尿病センター 准教授)
岡本 好司(東京大学医学部附属病院腎臓内分泌内科 医員)
4.発表概要:
アジア人に代表される非肥満型2型糖尿病の遺伝的要因を解明するために、ゲノム全域を探索し、KCNJ15遺伝子の多型が発症と進行に関わることを発見した。さらに、この遺伝子がインスリン分泌に関与している事を明らかにした。
5.発表内容:
2型糖尿病患者の増加は世界的な問題となっており、2025年には全世界の患者数は3億8000万人になると予測されています。また、世界中で10秒毎に1名が糖尿病に関連した疾患で死亡しています。もっとも患者増加率の高い地域はアジアやアフリカであり、アジアでは発展途上国を含め大きな問題になっています。欧米人とわれわれアジア人では同じ2型糖尿病であっても体型やインスリン分泌能が大きく異なり、疾患に関わる関連遺伝子も異なる可能性があります。
研究チームの岩﨑は、先に2型糖尿病164家系を用いた解析を行い、21番染色体に肥満のない2型糖尿病患者においてより有意な領域を発見しました。この成果に基づき、徳永、岩﨑、岡本を中心とする共同研究グループは、1568人の2型糖尿病患者と1700人の健常対照者を用いて解析を行い、KCNJ15遺伝子内の一塩基多型(SNP)が2型糖尿病と関係していることをつきとめました。このSNPのリスク型をもつ場合は2型糖尿病が発症するリスクが1.76倍となり、やせ型体型患者に限ると1.93~2.54倍に増加することがわかりました。しかも発症後も早期に重症化し、インスリンを必要とする頻度が増すこともわかりました。
デンマークのステノ糖尿病センターとの共同研究の結果、欧米人においてはこのリスク型はまれで関連は認められず、やせ型の患者が多いアジア人に特徴的な2型糖尿病の関連遺伝子であることを見出しました。
さらに、このリスク型をもつ人は、もたない人に比べてKCNJ15遺伝子のmRNAおよび蛋白の発現レベルが高く、この遺伝子は発症促進遺伝子である事がわかりました。しかもこの遺伝子は膵臓のインスリン分泌細胞において発現し、培養インスリン分泌細胞に過剰発現させるとインスリン分泌が減少することもわかりました。今後、新しい糖尿病発症メカニズムの解明とともに、新たな治療法や予防法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌『American Journal of Human Genetics』に1月7日付け(日本時間1月8日)で掲載予定です。
6.発表雑誌:
American Journal of Human Geneticsに2009年1月7日付けで発表
7.注意事項:
報道解禁日時は、アメリカ合衆国東部時間1月7日午後0時(日本時間1月8日午前2時)
8.問い合わせ先:
徳永 勝士:東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野 教授
岩﨑 直子:東京女子医科大学糖尿病センター 准教授
岡本 好司:東京大学医学部附属病院腎臓内分泌内科 医員