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室温付近で「うず巻き状スピン構造体;スキルミオン」の実現に成功(次世代省電力の磁気メモリ素子に期待)研究成果

室温付近で「うず巻き状スピン構造体;スキルミオン」の実現に成功(次世代省電力の磁気メモリ素子に期待)

平成22年12月17日

東京大学大学院工学系研究科

科学技術振興機構(JST)

物質・材料研究機構(NIMS)

理化学研究所(RIKEN)

室温付近で「うず巻き状スピン構造体;スキルミオン」
の実現に成功
(次世代省電力の磁気メモリ素子に期待)

 東京大学大学院工学系研究科の十倉 好紀 教授とJST 戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「十倉マルチフェロイックスプロジェクト」との共同で、これまで、極低温(<40K)でしか存在しなかった巨大な電気と磁気との結合を有する磁気状態であるスキルミオン結晶注1)を室温付近(270K)で実現することに世界で初めて成功しました。これにより高速かつ省電力の磁気メモリ素子への応用をはじめとしたスピントロニクスへの応用展開が期待されています。
 本研究共同グループは、室温付近でらせんスピン磁気構造を持つFeGe を数十nm程度の厚さの薄膜状に加工することにより、60Kから室温付近までの広い温度範囲で、弱磁場(数百~二千ガウス)下でスキルミオン結晶状態(図1)を実現し、磁場下でのローレンツ電子顕微鏡法注2)により実空間観測することに成功しました。また、スキルミオン結晶の結晶状態の詳細を明らかにしたほか、スキルミオン結晶の欠陥構造やスキルミオンの渦巻き回転の反転構造(図3)も明らかにしました。さらに、ナノメートルスケールの薄片化がスキルミオン結晶を安定化させるために極めて有効であることを見出しました(図4)。膜厚がスキルミオン結晶の格子定数asより非常に小さい時、2次元のスキンミオン相は広い温度領域で安定に存在します。一方、膜厚の増加に伴って、スキルミオン相の安定領域が縮小し、膜厚がasを超えると、スキルミオン相は不安定になり、らせん磁性転移温度付近のわずか数℃の温度範囲にしか存在しないことが判明しました。
 今回の成果は磁気状態と電気伝導が強い結合を示すスキルミオン結晶が室温付近でも安定化されることを示したものであり、次世代省電力磁気メモリ素子の実現に画期的な一歩をもたらすものです。特に、安定なスキルミオン結晶を創成する指針が明らかになったことで、今後さまざまなスキルミオンデバイスの作成が可能となりました。
本研究は、物質・材料研究機構と理化学研究所と共同で行われました。


※詳細はリリース文書をご覧下さい

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