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日本文化はやはり窮屈研究成果

「日本文化はやはり窮屈」

平成23年5月27日

東京大学大学院人文社会系研究科

1.発表者:
山口 勧(東京大学大学院人文社会系研究科 社会文化研究専攻 教授)
外山 みどり(学習院大学文学部 教授)

2.発表概要:
世界33ヶ国を対象にした調査で、日本は窮屈な方から8番目、という結果が得られた。この社会規範の強さに関する文化比較研究では、厳しい規範があり、それを逸脱すると罰を与えられるような窮屈な文化と、反対に規範が弱く、それを逸脱したときに与えられる罰も緩い文化という軸で国際比較を行った。その結果、日本は33ヶ国中、もっとも窮屈な方から8番目という結果が得られた。日本よりも窮屈な文化は、ノルウェーの6位以外、1位のパキスタンなどすべてアジア諸国(トルコを含む)であった。ちなみに、米国は23位であった。

3.発表内容:
これまでの文化人類学的研究において、文化間の違いの要素として、文化の窮屈さ(tightness)と緩さ(looseness)が重要であることが指摘されてきた。しかしながら、実証研究は少なく、今回の世界33カ国における調査は、初めての組織的な実証研究である。とくに、本研究では生態文化的な視点から、文化的な窮屈さ―緩さは、それぞれの文化が歴史的に直面してきた社会レベルでの脅威(たとえば、人口密度、食料や水がどのくらい容易に得られるか、国際間の領土紛争、天災や伝染病の脅威、など)の強さによって、形成されたものであると予測した。つまり、そうした社会的脅威に対処するために強い社会的規範や逸脱に対する処罰が必要になった、と考えた。この可能性を検討するために、それぞれの文化における社会的規範の強さと逸脱に対する罰の強さを質問紙によって測定し、文化の窮屈さの指標とした。具体的には、「この国には、人々が従わなくてはならない社会的規範がたくさんある」、「この国では、誰かが不適切な仕方でふるまえば、他の人がそのことを強く非難する」などという記述に対してどのくらい賛成するかを尋ねた。このようにして測定された窮屈さの指標と、上に例示したような社会レベルでの脅威との関連を分析した。その結果、文化が受けてきた脅威が強いほど、その文化の窮屈さの程度も高いという関係が確認された。
  国別にみると、文化の窮屈さ―緩さの次元で、日本はもっとも窮屈な方から8番目という結果であった。
 
[以下、山口のコメント]
以上の結果から、日本に関して言えば、世界の中で他の文化と比べてより窮屈な文化の範疇に入ること、そして、その原因は、歴史的に経験してきた自然および人工的な脅威(たとえば、地震などの自然災害の頻度、人口密度など)の程度が世界の平均よりも高かったことにある、と考えられる。

<参考:調査対象の33カ国(窮屈さの指標の高い方から)>
1. パキスタン、2. マレーシア、3. インド、4. シンガポール、5. 韓国、6. ノルウェー、
7. トルコ、8. 日本、9. 中国、10. ポルトガル、11. 旧東ドイツ、12. メキシコ、13. 英国、
14. オーストラリア及びイタリア、16. 旧西ドイツ、17. アイスランド、
18. フランス及び香港、20. ポーランド、21. ベルギー、22. スペイン、23. 米国、
24. オーストラリア、25. ギリシャ及びニュージーランド、27. ヴェネズエラ、
28. ブラジル、29. オランダ、30. イスラエル、31. ハンガリー、32. エストニア、
33. ウクライナ

4.発表雑誌:
雑誌名:「Science」(5月27日号)
(論文タイトル:Differences between Tight and Loose Cultures: A 33-Nation Study

著者:Michele J. Gelfand, Jana L. Raver, Lisa Nishii, Lisa M. Leslie, Janetta Lun,
Beng Chong Lim, Lili Duan, Assaf Almaliach, Soon Ang, Jakobina Arnadottir, Zeynep Aycan, Klaus Boehnke, Pawel Boski, Rosa Cabecinhas, Darius Chan, Jagdeep Chhokar, Alessia D’Amato, Montse Ferrer, Iris C. Fischlmayr, Ronald Fischer, Marta Fulop, James Georgas, Emiko S. Kashima, Yoshishima Kashima, Kibum Kim, Alain Lempereur, Patricia Marquez, Rozhan Othman, Bert Overlaet, Penny Panagiotopoulou, Karl Peltzer, Lorena R. Perez-Florizno, Larisa Petrovna, Anu Realo, Vidar Schei, Manfred Schmitt, Peter B. Smith, Nazar Soomro, Erna Szabo, Nalinee Taveesin, Midori Toyama, Evert Van de Vliert, Naharika Vohra, Colleen Ward, Susumu Yamaguchi

なお、筆頭著者のMichele J. Gelfandの所属は、米国のUniversity of Maryland。

5.問い合わせ先:
東京大学大学院人文社会系研究科 社会文化研究専攻
教授  山口 勧(やまぐち すすむ

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