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スプレーするだけでがん細胞が光り出す蛍光試薬を開発 ―外科・内視鏡手術における微小がん見落としの問題に大きく貢献―研究成果

記者会見「スプレーするだけでがん細胞が光り出す蛍光試薬を開発
―外科・内視鏡手術における微小がん見落としの問題に大きく貢献―」

平成23年11月24日

1.会見日時: 平成23年11月21日(木)16:00~16:45

2.会見場所: 文部科学記者会 会見場(東京都千代田区霞ヶ関3-2-2 東館12階)

3.出席者:  浦野 泰照(東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻 教授)

4.発表概要:
東京大学 大学院医学系研究科の浦野 泰照 教授と米国国立衛生研究所(NIH)の小林 久隆 主任研究員は、がんの存在が疑われる部分にスプレーするだけで、1分以内にがん部位のみを鋭敏に検出できる試薬の開発に成功しました。これは外科手術時や近年実施例が急増している内視鏡・腹腔鏡下施術において、微小がん部位の発見や取り残しの防止に大きく貢献するものです。

5.発表内容: 
JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学 大学院医学系研究科の浦野 泰照 教授と米国国立衛生研究所(NIH)の小林 久隆 主任研究員は、外科手術時や内視鏡・腹腔鏡施術時に、がんの存在が疑われる部分にスプレーするだけで、1分以内にがん部位のみを鋭敏に検出できる試薬の開発に成功しました。

現在、PETやMRIなどの原理に基づくがん診断法が医療現場で利用されていますが、これらの手法では1cm以下の微小がんの検出は困難です。しかし、がんの再発を防ぐには、例えば、腹腔内に転移した1mm程度の微小がんを検出し、これを全て取り除くことが非常に重要です。現状では、特殊な光学系を採用した内視鏡などを用いて、手術者自身の経験に基づいてくまなく探す以外に方法が無く、微小がん部位の見落としや取り残しが大きな問題となっていました。

このようにがん手術の臨床現場では、微小がん部位の適確な検出法の確立が強く求められていました。今回研究者らは、がん細胞が持つ特殊な酵素活性を鋭敏に検出し、がん部位のみに強い蛍光色を付ける試薬の開発に成功しました。この試薬を溶解した水溶液をがんが疑われる部位に少量スプレーするだけで、数十秒~数分程度で手術者の目でも直接確認できるほどの強い蛍光ががん部位から観察されることを、がんモデル動物を用いた実験で証明しました。このような局所散布による、短時間での鋭敏ながん部位可視化技術は、ほかに例のない世界初の技術です。

本研究成果は、外科手術時や近年実施例が急増している内視鏡・腹腔鏡下施術において、微小がん部位の発見や取り残しの防止を実現する画期的な技術として、臨床応用が期待されるものです。現在、浦野教授を研究代表者とするJST研究加速課題において、東京大学医学部附属病院とがん研究会有明病院と協同して、この蛍光試薬の効果の検証を患者体内から取り出したばかりのがんサンプルを用いて行っています。

6.発表雑誌: 
雑誌名:「Science Translational Medicine」 11月23日(米国東部時間)発行版
論文タイトル:Rapid Cancer Detection by Topically Spraying a γ-GlutamyltranspeptidaseActivated-Fluorescent Probe(和訳:新規γ-グルタミルトランスペプチダーゼ検出蛍光プローブの局所散布による迅速がん検出の実現)
著者:Yasuteru Urano, Masayo Sakabe, Nobuyuki Kosaka, Mikako Ogawa, Makoto Mitsunaga, Daisuke Asanuma, Mako Kamiya, Matthew R. Young, Tetsuo Nagano, Peter L. Choyke, Hisataka Kobayashi

7.問い合わせ先: 
東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻・教授・浦野 泰照

図など詳しい資料はこちら(JSTウェブサイトへ)

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