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東京大学と凸版印刷、次世代型の美術鑑賞システム「デジタル展示ケース」を開発研究成果

東京大学と凸版印刷、次世代型の美術鑑賞システム「デジタル展示ケース」を開発 ~東京国立博物館140周年特集陳列「天翔ける龍」にて公開~

平成23年12月27日

国立大学法人 東京大学
凸版印刷株式会社
東京国立博物館

 国立大学法人 東京大学(総長:濱田 純一、以下、東京大学)の大学院情報理工学系研究科(研究科長:萩谷 昌己、以下、情報理工)と凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は共同で、次世代型の美術鑑賞システム「デジタル展示ケース」の研究開発を進めています。今回この「デジタル展示ケース」を、東京国立博物館(館長:銭谷眞美)の協力のもと、同館で2012年1月2日から開催される、東京国立博物館140周年特集陳列「天翔ける龍」(以下 特集陳列「天翔ける龍」)にて公開します。
 「デジタル展示ケース」は、デジタル技術を用いて再現した文化財を画面上で鑑賞するだけでなく、あたかもその場にあるかのように自由に動かすなどのインタラクティブな疑似体験を通じて、文化財が持つ意味や機能などの理解を深めることを目指すものです。
 東京国立博物館が開催する特集陳列「天翔ける龍」にて、脚や胴などからだ全体が自在に動く文化財「自在置物 龍」が展示されます。今回公開する「デジタル展示ケース」では、この作品を題材として、普段は展示ケースの中にあって触れることのできない作品を、実際に自分の手で触って動かしているかのような疑似体験をすることによって、その作りの精巧さを実感できます。
 博物館での展示を目的とした「デジタル展示ケース」は、文部科学省の委託研究「複合現実型デジタル・ミュージアム(※)」の一環として、東京大学情報理工と凸版印刷が共同で開発を行っています。今回、東京大学情報理工が持つ複数の感覚情報を組み合わせたインタフェース技術と、凸版印刷の画像処理技術を応用した自由視点映像生成技術(システム概要参照)を用いることで、「自在置物 龍」をインタラクティブに体験するコンテンツを実現しました。
 東京大学情報理工と凸版印刷は、今後も「デジタル展示ケース」の研究を推進し、本システムを全国の博物館や美術館に展開、デジタル化された文化財を相互に利活用できる仕組みの実現を目指します。

 

<背景>
博物館では、文化財保護の観点から、展示物を展示ケースに入れ、鑑賞者が直接触れることのできない形態で公開するのが一般的です。これまでは、直接触って動かすことでその価値を表現できる文化財を展示する場合、ビデオ映像やレプリカなどを用いるほかに、動くことを伝える手段はありませんでした。
しかしビデオ映像では、動きそのものは見ることができるものの、実体験としての理解がしにくいといった課題がありました。また、レプリカの場合は制作に多大なコストがかかるだけでなく、メンテナンスの面でも課題がありました。
「デジタル展示ケース」によって、デジタル化された文化財を、あらゆる角度から鑑賞できるのはもちろん、動きなども疑似体験することができるようになり、より直感的な鑑賞体験の実現に成功しました。

<「デジタル展示ケース」の詳細>
■利用方法
  鑑賞者が「デジタル展示ケース」前面の装置に自分の腕を挿入すると、自分の手が「デジタル展示ケース」の画面上に現れ、実際に作品に触れているかのような感覚が得られます。鑑賞者は装置の中で手を動かすことで、画面上に表示された作品をあたかも実物を動かすかのように変形させることができます。さらに操作によって変形させた作品を、さまざまな方向から鑑賞できます。
■システム概要
  作品の自在な動きは、あらかじめコマ撮り撮影した画像から、操作に応じて必要な形状の画像を選択して表示することで実現しています。このとき、コマとコマの間の対応点を自動的に計算し、中間の形状の画像を新たに生成するデフォメーション技術を用いることで、滑らかな動きを実現しました。
また、対象となる文化財の前に複数の視点から同時撮影可能なカメラアレイを設置し、撮影された画像を画像処理することで、任意の方向からの画像を合成する自由視点映像生成技術を用いることで、作品の自在な動きをさまざまな方向から鑑賞することを実現しました。今回のコンテンツでは、全長約36cmの「自在置物 龍」の前に7方向から撮影可能なカメラアレイを設置し、撮影を行いました。
  装置の内部にはカメラを取り付け、このカメラで撮影された鑑賞者の手の映像を画面上に表示してあたかも作品を触っているかのように変換して表示しています。

<自在置物>
自在置物は、江戸時代から明治時代にかけて制作された金属製の美術工芸品で、動物や昆虫などを写実的に表したものです。その生き物の動きをリアルに再現するための精巧なつくりが特徴であり、最大の魅力です。「自在置物 龍」も、手脚や胴、尾、首などをまるで生きているかのように動かすことができます。

<「東京国立博物館140周年特集陳列『天翔ける龍』」>
開催期間:2012年1月2日~29日
場所:東京国立博物館 本館特別1室・特別2室
東京国立博物館140周年特集陳列である本展では、2012年の干支である龍をモチーフにした作品を展示します。詳細はhttp://www.tnm.jpをご覧ください。

※:「複合現実型デジタル・ミュージアム」
「複合現実型デジタル・ミュージアム」とは、東京大学、立命館大学、慶應義塾大学、情報通信研究機構、日本放送協会、NHKエンジニアリングサービス、NHKエンタープライズ、三菱総合研究所、凸版印刷が共同で提案し、採択された文部科学省の科学技術試験研究委託事業です。2010年度から5年間の計画で、博物館展示における「モノ」と「コト」を融合させた新しい展示手法を実現し、博物館への導入を目指します。そのために、MR(複合現実感)技術やVR(人工現実感)技術を用いた展示技術に加え、来館者の体験をトータルにサポートする鑑賞支援技術や、コンテンツを生成・蓄積するためのコンテンツ基礎技術の研究開発、さらにデジタルキュレーター養成やビジネスモデルについての検討を行うことで、持続可能なデジタル・ミュージアムの実現を目指します。詳細はhttp://www.mr-museum.org/をご覧ください。

<「デジタル展示ケース」に関するお問い合わせ先>
東京大学大学院情報理工学系研究科 廣瀬・谷川研究室
凸版印刷株式会社 広報部
<東京国立博物館に関するお問い合わせ先>
東京国立博物館 広報室


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