プレート沈み込み帯の巨大地震に関わる国際研究集会開催のお知らせ記者発表

プレート沈み込み帯の巨大地震に関わる国際研究集会開催のお知らせ |
平成24年2月21日
東京大学大学院理学系研究科
平素は、東京大学大学院理学系研究科の活動に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
東京大学大学院理学系研究科、木村 学教授が代表をつとめる文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「超深度掘削が拓く海溝型巨大地震の新しい描像」(平成21年度~25年度)では、プレート沈み込み帯、特に南海トラフにおける巨大地震発生の理解を目指して研究を進めています。計画の中盤にあたり、これまでに得られた成果を公表するとともに、国内外の第一線の研究者との議論を行うため、国際研究集会を開催します。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震におけるマグニチュード9の地震および巨大な津波は東北地方の太平洋沿岸地域に甚大な被害を及ぼし、多数の死者と行方不明者を出しました。このような沈み込み帯に沿った巨大地震とそれに伴う津波は過去にも甚大な被害をもたらしています。これまで研究者は、主に地震学的、測地学的手法により沈み込み帯での地震とそれに関わる諸現象の理解のため研究を行ってきました。また、これらのリモートセンシングによる研究に加え、地震断層への直接掘削による試料採取、深部掘削孔での観測などを試みています。例えば2007年には米国西海岸サンアドレアス断層におけるプロジェクト(SAFOD)において、深度2700mから断層岩が採取されています。一方、沈み込み帯については、統合国際深海掘削計画(IODP)の南海トラフ地震発生帯掘削計画(NanTroSEIZE)において地震断層からの試料採取を目指しており、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた掘削研究が現在行われています。採取された断層岩の分析・実験、掘削孔深部での観測を通して、沈み込み帯に沿った地震発生過程の理解を大いに進展させるものと考えています。
この会議では、古地震研究、様々な現場観測、室内実験、分析、地震準備・発生機構・発生周期に関わる数値モデリングの最近の成果を統合し、南海トラフをはじめとする沈み込み帯に沿った巨大地震の新しい描像の構築を目指しています。なお、国際研究集会の開催地である高知は、将来の南海地震の震源域に隣接し、三波川帯や四万十帯などの過去の地震発生帯が露出しており、さらに熊野沖での南海トラフ地震発生帯掘削計画で得られた試料をはじめ、統合国際深海掘削計画の試料を保管するJAMSTEC高知コア研究所が設けられており、本テーマを議論するに最も相応しい場所として設定しました。
記
日 時:平成24年2月28日(火)9時-17時30分、29日(水)9時-17時30分、
3月1日(木)9時-12時15分
場 所:高知文化プラザかるぽーと
使用言語:英語(通訳はございませんが、事前にご連絡をいただければ、会議中に日本語で質問にお答えしたいと考えております。)
プログラム:別紙参照
定員:140名
参加費:無料
※報道関係の方で当日お越し下さる場合は、事前にご連絡下さい。
※本シンポジウムの詳細は、以下のウェブサイトよりご参照いただけます。
http://www-solid.eps.s.u-tokyo.ac.jp/nantro~/pg274.html
(問い合わせ先)
東京大学大学院理学系研究科
担当 井出 哲准教授
東京大学大学院新領域創成科学研究科
担当 芦 寿一郎准教授
【会場地図】
【添付資料】プログラム
和訳プログラム(講演は英語で行われます)
2月28日
9:30 木村学(東京大学)海溝型巨大地震の新しい描像
10:00 H. J. Tobin (ウィスコンシン-マジソン大学)NanTroSEIZE: これまでとこれから
10:30 休憩
10:45 G. F. Moore (ハワイ大学)南海トラフの前弧海盆発達と巨大分岐断層の関係
11:15 P. Henry (フランスCEREGE)分岐断層の形成と再活動化条件
11:45 J. C. Moore (カリフォルニア大学)断層を探す
12:15 昼食・ポスターセッション
14:45 朴進午(東京大学)南海トラフにおけるデコルマ反射の特徴の多様性
15:15 M. B. Underwood (ミズーリ大学)スメクタイトの収支は海溝型巨大地震に影響するか?
15:45 芦寿一郎(東京大学)ROV “NSS” による熊野沖南海沈み込み帯の付加プリズムと前弧海盆の高解像度浅部構造
16:15 休憩
16:30 木下正高 (海洋研究開発機構)熊野沖南海地震発生帯におけるボアホールその場観察
17:00 D. Saffer(ペンシルバニア州立大学)沈み込み帯における空隙内流体圧の定量化
2月29日
9:00 金川久一(千葉大学)南海トラフ付加プリズム浅部の泥試料の水理学および力学特性
9:30 C. J. Spiers (ユトレヒト大学)南海から東北までの沈み込み帯条件でのイライトを多く含む断層ガウジの摩擦特性
10:00 G. Di Toro (パドヴァ大学)岩石変形実験による地震時の摩擦特性
10:30 休憩
10:45 E. M. Dunham (スタンフォード大学)海溝型巨大地震の動的破壊過程
11:15 井出哲 (東京大学)南海沈み込み帯における地震発生プロセスの総合モデル化に向けて
11:45 古村孝志(東京大学)南海トラフの地震シナリオ再評価と強震動・津波の計算機シミュレーション
12:15 昼食・ポスターセッション
14:45 日野亮太(東北大学)2011年東北沖地震(M9.0)の地震性・非地震性すべり、およびその巨大プレート間地震発生過程における意味
15:15 小平秀一(海洋研究開発機構)2011年東北沖地震の海溝近傍巨大すべりの地球物理学的証拠
15:45 E. E. Brodsky (カリフォルニア大学)最近の巨大地震の直後緊急掘削による応力測定
16:15 休憩
16:30 R. H. Sibson (オタゴ大学)沈み込み帯前弧における応力スイッチング
17:00 C. Goldfinger (オレゴン州立大学)スーパー地震とスーパーサイクル
3月1日
9:00 S. Hickman (米国地質調査所)サンアンドレアス断層の地震発生深度での構造、状態、力学特性
9:30 T.-F. Wong (ニューヨーク州立大学)コアとカッティングの摩擦強度の室内実験データSAFODにおける応力と空隙流体圧の状態
10:00 J.-P. Gratier (ジョゼフフーリエ大学)非地震性クリープのメカニズム
10:30 休憩
10:45 D. R. Shelly (米国地質調査所)サンアンドレアス断層の微動のダイナミクス、およびその横ずれ断層・沈み込み帯の変形における意味
11:15 L. M. Wallace (ニュージーランドGNS)ヒクランギ沈み込み帯における海溝型巨大地震のポテンシャル評価