PRESS RELEASES

印刷

筋萎縮性側索硬化症を引き起こす変異型SOD1タンパク質に共通の構造変化を解明研究成果

記者会見「筋萎縮性側索硬化症を引き起こす変異型SOD1タンパク質に共通の構造変化を解明」

平成24年8月22日

東京大学大学院薬学系研究科

【発表のポイント】
○どのような成果を出したのか:筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす100種類を超える様々なタイプの変異型SOD1タンパク質が毒性を発揮する共通の機構を明らかにしました。

○新規性:ALSを引き起こす様々なタイプの変異型SOD1タンパク質が共通の構造変化を引き起こしていることを明らかにし、また、ALSを引き起こすタイプの変異型SOD1を見分ける抗体を作製することに成功しました。

○社会的意義/将来の展望:本研究成果により、様々なタイプのSOD1遺伝子変異によるALSに適用可能な診断薬ならびに治療薬の開発が期待されます。

【発表概要】
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;ALS)は、運動神経が特異的に障害される極めて重篤な神経変性疾患です。ALSの原因はいまだに不明ですが、約1割の患者は遺伝子異常で発症します。特にCu, Zn superoxide dismutase (SOD1)(注1)という酵素をコードする遺伝子の様々な変異(100種類以上)が知られています。しかし、様々な変異型SOD1がALSを引き起こす共通の機構については全く分かっていませんでした。今回、東京大学大学院薬学系研究科の一條秀憲教授と藤澤貴央特任助教らの研究グループは、東京大学医学部附属病院神経内科(辻省次教授)との共同研究で、ALSを引き起こす変異型SOD1が、共通した立体的な構造を取ることにより神経毒性を引き起こすことを世界で初めて発見しました。また、この構造にのみ反応する抗体の開発に成功しました。本研究成果は、遺伝性ALSの新しい診断に寄与すると同時に、様々なタイプのSOD1遺伝子変異によるALSに適用できる、新しい治療薬の開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2012年8月21日に、米国の科学雑誌「Annals of Neurology」のオンライン版に公開されます。なお、本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、また科学研究費補助金ならびに先駆的医薬品・医療機器研究発掘支援事業などの助成を受けて行われました。

(注)SOD1(Cu/Zn superoxide dismutase):細胞内で発生する有害な活性酸素であるスーパーオキシドを解毒する反応系を触媒する酵素です。1993年にALSの原因遺伝子であることが報告され、現在までに100種類以上の遺伝子変異が報告されています。

大学院薬学系研究科ウェブサイト News
会見の資料(PDFファイル)
論文へのリンク:A novel monoclonal antibody reveals a conformational alteration shared by amyotrophic lateral sclerosis-linked SOD1 mutants (Annals of Neurology 2012, ASAP)

●本プレスリリース内容に関するお問い合わせ     
東京大学大学院薬学系研究科 薬科学専攻 細胞情報学教室
一條 秀憲
(一條不在時:藤澤貴央)
●連絡先
文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラム事務局

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる