青色灯設置により、列車への飛び込み自殺が減少研究成果
青色灯設置により、列車への飛び込み自殺が減少
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平成24年10月9日
東京大学大学院経済学研究科
1.発表者:
澤田康幸(東京大学大学院経済学研究科教授)
上田路子(Syracuse University, Research Assistant Professor of Political Science)
松林哲也(University of North Texas, Assistant Professor of Political Science)
2.発表のポイント:
◆どのような成果を出したのか
首都圏のある鉄道会社のデータを用いた統計分析により、駅ホームにおける青色灯の設置後に鉄道自殺者数が平均して約84パーセント下落することが分かった。
◆新規性(何が新しいのか)
自殺対策として、様々な鉄道会社が駅や踏切において青色灯の設置を進めてきたが、その科学的証拠は皆無であった。本論文は鉄道駅青色灯の自殺防止効果を初めて示した研究である。
◆社会的意義/将来の展望
ホームドア設置に加えて、青色灯設置が有効な自殺防止の方法であることが明らかにされたことは、緊急の鉄道自殺問題の具体的対策を推し進める上で社会的意義が大きい。
3.発表概要:
鉄道駅や踏切における列車への飛び込み自殺は多くの国で大きな社会問題の一つとなっているが、特に日本では、自殺による輸送障害が増加しており、自殺対策全体において重要な課題となっている。東京大学の研究グループ(大学院経済学研究科教授の澤田康幸、アメリカ・シラキュース大学の上田路子、アメリカ・ノーステキサス大学の松林哲也)は、列車への飛び込み自殺を防止する手段として、鉄道会社により近年用いられるようになった青色灯の効果について、首都圏のある鉄道会社のデータを用いた統計分析を行った。駅における青色灯設置と自殺者数のデータを用いた分析の結果、青色灯の設置後には自殺者数が平均して約84パーセント下落することが分かった。
これまでJR各社をはじめとして様々な鉄道会社が駅や踏切において青色灯の設置を進めてきたが、青色灯の設置によって自殺者数が減ったことを示す科学的証拠はこれまで提示されていなかった。本論文は鉄道駅における青色灯の自殺防止効果を厳密な統計解析によって初めて示した研究である。以上により、青色灯も、ホームドアに加え有効な鉄道自殺防止の方法になり得るということが示された。
4.発表内容:
鉄道駅や踏切における列車への飛び込み自殺は多くの国で大きな社会問題の一つとなっている。特に日本では、自殺による輸送障害(列車の運休や30分以上の遅延など)は2006年度に534件であったものが2009年度には682件と3年間に3割近くも増えており(国土交通省の調査による)、鉄道自殺を抑止することは自殺対策全体において重要な課題となっている。また、列車への飛び込み自殺は、目撃者や関係者に精神的なショックを与えたり、安全な鉄道の運行を妨げたりするだけでなく、到着の遅延を招くなど大きな社会的損失を生み出す原因となることからも、緊急の対策が必要とされる問題だと言える。Journal of Affective Disordersのオンライン版にて公開された”Does the installation of Blue Lights on Train Platforms Prevent Suicide?: A Before-and-After Observational Study from Japan”において、東京大学の研究グループ(大学院経済学研究科教授の澤田康幸、アメリカ・シラキュース大学の上田路子、アメリカ・ノーステキサス大学の松林哲也)は、列車への飛び込み自殺を防止する手段として、鉄道会社により近年用いられるようになった青色灯の効果について、首都圏のある鉄道会社のデータを用いた統計分析の結果を発表している。青色灯は、踏切やホーム端に設置され、点灯は夜間のみ行われている。駅における青色灯設置と自殺者数についての2000年から2010年のデータを用いて分析を行ったところ、青色灯の設置後には自殺者数が平均して約84パーセント下落することが明らかになった。自殺者数の同様の減少は青色灯未設置の駅においては観察されていない。なお、駅によって自殺件数に違いが存在するため、分析の際には駅の特性などが考慮に入れられている。
これまで、JR各社をはじめとして様々な鉄道会社が駅や踏切において青色灯の設置を進めてきた。青色灯には人間の気持ちを落ち着ける作用があるとされ、自殺を思いとどまらせる効果への期待がその背景にある。しかし、自殺を試みる人々の心理・行動に対して青色照明が持つ効果については科学的に証明されているわけではない。また、青色灯の設置によって自殺者数が減ったことを示す科学的証拠はこれまで提示されていなかった。本論文は鉄道駅における青色灯の自殺防止効果を厳密な統計解析から初めて示した研究であり、今後の自殺防止対策に重要な示唆を与える。鉄道駅における自殺防止対策としてホームドアの設置が効果的であることがこれまで論じられてきたが、プラットホームの改良等が必要となるためその設置費用も大きい。一方、ホームドアに比べ青色灯設置の費用は低いと考えられるため、費用対効果という点から考えて、青色灯の設置も、ホームドアに加えて有効な自殺防止の方法だと言えるであろう。
5.発表雑誌:
雑誌名:Journal of Affective Disorders, Elsevier (2012年9月11日掲載)
論文タイトル:”Does the installation of Blue Lights on Train Platforms Prevent Suicide?: A Before-and-After Observational Study from Japan”
著者:澤田康幸、上田路子、松林哲也
DOI番号:10.1016/j.jad.2012.08.018
アブストラクトURL:http://dx.doi.org/10.1016/j.jad.2012.08.018
6.問い合わせ先:
澤田康幸(東京大学大学院経済学研究科 教授)