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記者会見「自律型海中ロボット(AUV)3台をスミス海丘カルデラで同時展開、熱水マウンド状地形を発見」研究成果

記者会見「自律型海中ロボット(AUV)3台をスミス海丘カルデラで同時展開、熱水マウンド状地形を発見」

平成24年11月5日

東京大学生産技術研究所

1.発表日時:
平成24年11月5日(月)13:30~14:30(受付開始 13:00)

2.発表場所:
東京大学生産技術研究所 総合研究実験棟An棟3F会議室(An301、302)
〒153-8505 目黒区駒場4-6-1 駒場リサーチキャンパス
http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/access/access.html(参照)

3.発表者:
東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター  浦  環 (センター長、教授)

4.発表ポイント:
①成果
開発した自律型海中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle) 3台を海底熱水鉱床発見が期待される海域にて同時展開することに世界で初めて成功し、ロボット「AE2000a」(注1)に搭載したサイドスキャンソナーにより、活動を停止している熱水マウンド状(注2)の地形を発見した。
②新規性
・タイプの異なる自律型海中ロボット(航行型2台、ホバリング型1台)3台を世界で初めて同時展開し、海底熱水鉱床の観測を行うことに成功した。
・ロボットが計測した海底地形データおよび化学計測機データから、過去に活動していた熱水活動域と考えられる場所を探し当てることに成功した。
③意義/将来展望
深海底観測の高効率化を図るとともに観測項目の多様化と高精度化を実現した。
活動中のみならず、活動を停止している熱水域の発見ツールとして、AUVによる海底鉱物資源開発に新たな一歩を記した。
  
5.発表概要:
広大な領海・EEZ(排他的経済水域)をもつ日本においては、鉱物資源開発という観点から海底熱水鉱床の探索が重要性を増してきています。深海底観測においては、海底面近傍を機動的に観測できる小型な自律型海中ロボットの活躍が期待されています。
今回、東京大学生産技術研究所 国際研究センター 浦 環 教授の研究室を中心とするロボット研究開発チームは、タイプの異なる自律型海中ロボット(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)3台(航行型2台:「AE2000a」, 「AE2000f」(注1)、ホバリング型1台: 「TUNA-SAND」(注3))を、八丈島南方のスミス海丘カルデラにて、同時展開することに世界で初めて成功しました。さらに「AE2000a」が計測したサイドスキャンソナーデータより、カルデラ内に熱水マウンド状の地形を発見しました。近傍に同時展開した「AE2000f」が計測した化学計測器による海水計測からは、その周囲に熱水が吹き出している徴候がみられなかったことから、活動を停止している熱水マウンドと推定されます。
今回の記者会見では、AUVの3台同時潜航とマウンド地形の発見の概要を紹介いたしますので、よろしくご参集下さい。

6.発表内容:
背景
これまでの深海底の観測では、一隻の船から一台のAUVやROV(遠隔操縦機:Remotely Operated Vehicle)などの潜水機器を展開して行ってきました。この間、船の行動は展開する潜水機にしばられてしまうという問題がありました。
研究船による調査時間は限られていますので、複数台の水中機が同時展開できれば、深海底観測はスピードアップすることができます。また、水中機それぞれが異なる観測センサを搭載して、それぞれの観測ミッションを遂行できれば、ロボットサイズを小型化できるため、大型母船は不要となります。さらに、複数の水中機を利用することで観測項目の多様化と高精度化が可能となるため、深海底のより詳細な観測が実現されます。

ミッション
その嚆矢として、研究チームが開発した自律型海中ロボット(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)で航行型の「AE2000a」と「AE2000f」およびホバリング型の「Tuna-Sand」の計3台を、八丈島南方の180kmにあるスミス海丘カルデラにて同時に展開、観測活動を行いました。
ロボットは、JAMSTEC((独)海洋研究開発機構)の海洋調査船「かいよう」から約30分間隔で次々に投入され、約900m深度のカルデラ底へと潜航していきました。それぞれのミッションは、以下のとおりです。

「Tuna-Sand」:スチルカメラで海底の写真撮影
「AE2000a」:サイドスキャンおよびインターフェロメトリーソナーで詳細な海
底地形図を作成
「AE2000f」:化学計測器などで海水を計測

「AE2000a」が計測してきた海底地形には、熱水マウンド状の地形があることが鮮明に見て取れました。その周囲における「AE2000f」のデータには、熱水が吹き出している徴候はありませんでした。このことより、マウンド状の地形は過去に活動し、現在は活動を停止している過去の熱水地帯である可能性が高いことがわかりました。この地形は、熱水活動が確認され、経済産業省が重点的に調査を行っている伊是名海穴白嶺サイトと同じような地形になっています。なお、白嶺サイトの地形は、発表者らが開発したAUV「r2D4」がJOGMEC((独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構)との共同研究にて2008年に明らかにされたものです。

結果の概要
(1)タイプの異なる自律型海中ロボット(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)3台(航行型2台、ホバリング型1台)を八丈島南方のスミス海丘カルデラにて、同時展開することに世界で初めて成功した。
(2)ロボット「AE2000a」がサイドスキャンソナーにより計測した海底地形データおよび「AE2000f」が化学計測器により計測したデータを照合することで、過去に活動していた熱水活動域と考えられる場所を探し当てることに成功した。

今後の展開
今回の異なる2タイプのAUVの3台同時展開の成功は複数台の水中機同時展開による深海底観測という新しい時代の幕を開けたものです。また、過去に活動していた熱水活動域と考えられる場所をAUVが探し当てたことは、今後の海底鉱物資源開発に新たな一歩を記したといえます。
 
7 .問い合わせ先:
東京大学生産技術研究所
海中工学国際研究センター センター長(教授) 浦 環(うら たまき) 
http://underwater.iis.u-tokyo.ac.jp/

8.用語解説:
(注1)「AE2000a」、および「AE2000f」:重量約350kgの中型航行型AUV
(注2)海底面から噴出する熱水に含まれる金属成分が海水に冷やされて沈殿した鉱床
を熱水鉱床と言い、チムニー(熱水噴出口)および熱水マウンド(熱水噴出口
などがある小高い山)から形成される。
(注3)「TUNA-SAND」:重量約250kgの小型ホバリング型AUV

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