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平成24年度 立川断層帯トレンチ調査「榎(えのき)トレンチ」の調査結果について研究成果

平成24年度 立川断層帯トレンチ調査「榎(えのき)トレンチ」の調査結果について

平成25年3月28日

東京大学地震研究所

東京大学地震研究所(所長 小屋口剛博)は、文部科学省が実施している「立川断層帯の重点的調査観測・研究」(研究代表 東京大学地震研究所 教授 佐藤比呂志)の一環として、立川断層帯の地表付近の構造や過去の活動について明らかにすることを目的として、平成24年度よりトレンチ調査などの活断層・変動地形調査を実施しています。トレンチ調査とは、地形に残された活断層の痕跡などを手がかりに、調査溝(トレンチ)を掘って人工的に地層を露出させ、断層や地層の構造や形成された時期などから過去の地震の時期(活断層の活動史)などを推定する調査方法です。
  本年度は、榎(えのき)地点(武蔵村山市・立川市)にて巨大トレンチ調査を実施しました。この度、2月に実施した現地説明会以降の調査内容をふまえて、本トレンチ調査の結果(資料1を参照)について、報道関係者を対象として、下記の日時で説明会を開催いたします。

平成24年度立川断層帯トレンチ調査 榎トレンチ 調査結果説明会
日時 : 平成25年3月28日(木)  9:00 ~ 10:00
場所 : KKRホテル東京 11階宴会場 『孔雀』 [東京都千代田区大手町1-4-1]

・地震研究所 立川断層帯ホームページ http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/project/tachikawa/

本件の説明会責任者
東京大学地震研究所 地震予知研究センター 教授 佐藤比呂志


資料1 立川断層・榎トレンチ調査の結果について

1.トレンチ調査の目的
立川断層帯は、名栗断層と立川断層から構成され、埼玉県飯能市から東京都青梅市、立川市を経て府中市に至る、長さ33 km、北西走向の断層帯です。立川断層は、北西走向で長さは20km余、首都圏にあってごく近い将来に活動するおそれのある活断層として注視されています(地震調査委員会、2003;2011)が、その活動履歴はもとより活断層としての性格についても未だ不明な点が多々残されています。それらを解明するため、本調査では、長さ約250m、深さ約10mとこれまでの活断層トレンチ調査では類を見ない巨大なトレンチ(榎トレンチ)を掘削しました。
本調査は、これまでの通常のサイズ(長さ数10m、深さ3-5m)のトレンチ調査では把握することが難しかった、立川断層がつくった変位構造の全体、すなわち、主断層帯をその変位に関係した変形構造全体とともに捉え、さらに活動の繰り返し性の把握をも狙った新たな試みです。

2. 調査結果について
  2月の説明会では、トレンチの壁面には段丘面を構成する立川礫層(れきそう)が広範囲に露出し、従来立川断層が形成した変動崖とされてきた崖地形付近に、立川礫層を変位させる垂直な断層構造が数条認められ、これが立川断層の主断層帯にあたる可能性が高いとしました。その後、さらに精査を加えるとともに、埋め戻しの過程で断層部分を深掘りするなど検討を進めました。その結果、当初断層としていた構造が露頭深部に連続しないことや、主断層帯とした部分に列状に配列する特徴的な白色粘土塊が人工物であることが判明しました。以上の新たな事実確認により、本トレンチでは断層構造は認められないとの結論に至りました。加えて、立川礫層の構造を詳細に検討した結果、変動崖地形で想定される上下方向の主要な変位に対応した変形構造は認められないこともわかりました。崖地形のふもと付近ではより新しい河成堆積物が確認され、崖地形はむしろ浸食崖である可能性が高いと判断しています。これまでの物理探査の結果では、地下には断層が存在することが知られており、今回の調査結果は活断層の存在を否定するものではありません。今後は、今回の調査結果に加えて、現在同地点で実施している三次元反射法地震探査の結果や、次年度以降に本プロジェクトで実施するトレンチ・ボーリングや物理探査などの調査を踏まえて、立川断層の位置や活動性について更に詳しく検討を進める予定です。

【参考】「立川断層帯の重点的調査観測・研究」の概要
  文部科学省では、平成24年度から、「立川断層帯の重点的調査観測・研究」を実施しています。立川断層帯については、震源断層の形状については不明な点が多く、また長期評価に重要な活動履歴の信頼性は低いとされ、過去の活動時期についてさらに精度良く絞り込む必要があります。また、断層帯の走向から相当程度あると想定される横ずれ成分の平均的なずれの速度は全く不明です。さらに想定震源域が人口稠密地に位置することから、より精度の高い強震動予測が必要になります。こうした背景から、本プロジェクトでは、立川断層帯で発生する地震の規模の予測、発生時期の長期評価、強震動評価の高度化に資することを目的とした研究を行います。自然地震観測・地殻構造調査・変動地形および古地震調査・強震動予測など、総合的な調査研究が、3カ年にわたって実施されます。

※参考資料は、立川断層帯プロジェクトホームページをご確認ください。

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