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物質科学シミュレーションが簡単に導入できる、“MateriApps LIVE!”を開発 ~「京」等のスパコンで利用しているアプリケーションソフトをUSBメモリに集約!~研究成果

物質科学シミュレーションが簡単に導入できる、“MateriApps LIVE!”を開発
~「京」等のスパコンで利用しているアプリケーションソフトをUSBメモリに集約!~

平成26年3月14日


1. 代表者: 常行 真司(計算物質科学イニシアティブ統括責任者・
東京大学大学院理学系研究科・東京大学物性研究所 教授)

2.発表のポイント: 
◆「京」をはじめとするスーパーコンピュータ(スパコン)で利用されている最先端のアプリケーションソフトウェア(アプリ)をパッケージングした”MateriApps LIVE!”を開発。
◆アプリだけでなく、アプリを利用するために必要なオペレーティングシステムソフトウェア(OS)や可視化ツール等もあわせてパッケージングしており、ノートやデスクトップ等のPC上で簡単に利用可能。
◆東京大学物性研究所、自然科学研究機構分子科学研究所、東北大学金属材料研究所が中核となって運営するコミュニティー“計算物質科学イニシアティブ(CMSI)”がアプリの利用をサポート。

3.“MateriApps LIVE!”の概要:
世界最高クラスの性能を有するスーパーコンピュータ「京」。文部科学省が推進するHPCI戦略プログラムの中で、「新物質・エネルギー創成」の分野を東京大学物性研究所が受託し、自然科学研究機構分子科学研究所、東北大学金属材料研究所と連携した計算物質科学イニシアティブ(CMSI)を組織し、そのプログラムの運営を行っています。このCMSIでは、「京」やスパコンを利用した研究開発とともに、計算科学を社会貢献に導くためのアプリ普及活動を実施しています。平成25年10月には、国内外で開発されている原子や分子の振る舞い等を計算する物質科学の複数のアプリの紹介と、検索機能を有する、物質科学シミュレーションのポータルサイト“MateriApps”の運用をはじめました。アプリの利用者と開発者がこのサイトにつどい、おもにスパコンで利用する国産アプリの利用促進を行ってきました。

一方で、MateriAppsで紹介しているアプリをいろいろと試してみたい!という方に対して、アプリをインストールするために必要なオペレーティングシステムソフトウエア(OS)の準備や、アプリのダウンロード等が利用開始の大きな障壁となっており、普及を妨げていることが明らかになってきました。

そこで、“インストール作業なし”で複数のアプリを試せる環境を提供するため、“MateriApps LIVE!”を開発しました。どのようなPCでも簡単に動作できるようアプリを汎用的なバイナリファイル(補足説明(6)参照)に加工し、さらにOS(Debian GNU/Linux)、エディタ、可視化ツールなど、アプリを使いはじめるのに必要な環境をすべてまとめたAll in One パッケージとして1本のUSBメモリに収めました。これにより、ノートPCなどで、気軽に、電子状態、分子動力学、格子模型等、複数の物質科学のシミュレーションを試せます(2014.3.13時点で11アプリを搭載)。バイナリ化したアプリを随時、追加しています(補足説明(5)参照))。
なお、開発した“MateriApps LIVE!”は下記の“MateriApps”のサイトよりダウンロードできます。USBメモリにインストールしてお使い下さい。

“MateriApps”サイト; http://ma.cms-initiative.jp ⇒ アプリを探す“MateriApps Live!”の紹介をクリック

4.効果
  この“MateriApps LIVE!”を開発したことにより、以下の効果が期待できます。
・気軽に複数のアプリを比較して試し、適したアプリの選定が簡単にできる。
・シミュレーションした結果をすぐに可視化ツールで視覚的に確認し、直観的に理解することができる。
・教育現場や企業等で結果を共有しながらの試験利用により、効果的な教育ツールとして活用できる。
・物質や材料開発に計算科学の導入が促進されることで、半導体や電池等の電子・エネルギーデバイス、金属等の構造物や超伝導材料、有機合成物質等、新物質・材料開発が加速される。

5.発表日時、場所
  下記2つの学会に併設して行われる展示会にて、“MateriApps LIVE!”を紹介します。2会場とも、モニターとなっていただける先着50名の方には“MateriApps LIVE!”をインストール済のUSBメモリを配布いたします。
(1) <会議名>応用物理学会春季学術講演会
<開催日>平成26年3月17-20日(月-木)
<開催場所>青山学院大学相模原キャンパス 展示会場
(2) <会議名>日本物理学会春季大会
<開催日>平成26年3月27-30日(木-日)
<開催場所>東海大学湘南キャンパス 展示会場

6.問い合わせ先: 
<MateriAppsに関する技術的なお問合せ>
計算物質科学イニシアティブ(CMSI)  “MateriApps”開発チーム
<取材について・CMSIに関する一般的なお問合せ>
CMSI事務局

20140314_01
図1 MateriApps LIVE!を搭載したUSBメモリ

<補足説明>
(1) スーパーコンピュータ「京(けい)」
文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、理化学研究所と富士通が共同で開発を行い、2012年9月に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。
「京」の持つシミュレーション精度や計算速度の飛躍的な高さを活かした世界最高水準の成果が期待され、HPCI戦略プログラムの他、産官学を問わずあらゆる分野の課題を公募して、「京」で初めて実現できる研究課題を厳選して実施している。

(2) HPCI戦略プログラム
「京」を中心としたHPCIを最大限に活用することによって、①画期的な成果の創出、②高度な計算科学技術環境を使いこなせる人材の創出、③最先端コンピューティング研究教育拠点の形成を目指し、戦略的に取り組むべき5つの研究分野(戦略分野)において「研究開発」および「計算科学技術推進体制の構築」を推進する文部科学省のプログラム。

5つの研究分野(戦略分野)
・分野1 予測する生命科学・医療および創薬基盤(戦略機関:理化学研究所)
・分野2 新物質・エネルギー創成
(戦略機関:東京大学物性研究所、自然科学研究機構分子科学研究所、東北大学金属材料研究所)
・分野3 防災・減災に資する地球変動予測(戦略機関:海洋研究開発機構)
・分野4 次世代ものづくり
(戦略機関:東京大学生産技術研究所、宇宙航空研究開発機構、日本原子力研究開発機構)
・分野5 物質と宇宙の起源と構造
(戦略機関:筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、国立天文台)
*戦略機関とは、各戦略分野における研究開発等を牽引する機関

(3)計算物質科学イニシアティブ(CMSI)
HPCI戦略プログラム 分野2を推進する研究ネットワーク。物性科学、分子科学、材料科学のコミュニティーを母体とし、大規模計算でサイエンスのブレークスルーを目指す全国の計算科学研究者で構成されている。東京大学物性研究所、自然科学研究機構分子科学研究所、東北大学金属材料研究所が戦略機関となり、その活動の中核を担う。新物質やエネルギーの創成に関する研究を戦略的に推進している。一方、将来「京」を活用する候補となる研究を幅広く支援し、また、開発したアプリケーションソフトの利用を促進する等、計算物質科学分野の振興活動を実施している。

(4)MateriApps
物質科学の計算、理論、実験にかかわる産官学の研究者、および、計算機科学の研究者のための、物質科学シミュレーションのポータルサイト 。CMSIが運営している。国内外で開発された汎用アプリだけでなく、これまであまり知られていなかったアプリや現在開発中のアプリも含めて、それらの機能・特徴を紹介している。公開アプリについては、マニュアル・チュートリアルなど利用者が直接ダウンロードして気軽に試すことのできる環境を提供している。利用者の「やりたいこと」から効率的に検索が行えるよう、アプリはその計算手法、対象となる物質、興味のある現象・物理量などの視点から多次元的に整理されている。また、アプリケーションの魅力、将来性、応用性について開発者自身の生の声を伝えている。さらには、アプリケーションごとに用意されたフォーラムにより、利用者とアプリケーション開発者が直接情報共有、意見交換を行うことのできる場を提供している。

(5) “MateriApps LIVE!”にインストールされているアプリ
OS: Debian GNU/Linux 基本システム、GUI環境
物質科学アプリ:ABINIT, ALPS, CP2K, GAMESS (セットアップツールのみ), feram, ERmod, Gromacs, MachKKR, OpenMX, Quantum Espresso, xTAPP (計11アプリ)
(近日中に追加;DSQSS, FU, MDACP, Modylas, Phonopy, RSDFT, RSPACEなどを追加予定)
可視化ツール: gnuplot, OpenDX, Paraview, Pymol, TAPIOCA他
エディタ: emacs, nano, vim他
開発ツール: gcc, g++, gfortran, python, ruby, python, cmake他
※各アプリの詳細については、“MateriApps”サイト; http://ma.cms-initiative.jp ⇒ アプリを探す“MateriApps Live!”の紹介をクリック

(6)バイナリファイル
人間が理解できるプログラム言語を用いて記述されたソースコードを、コンパイルという手順を通して、コンピュータが理解できる0と1からなる機械語に翻訳し、コンピュータ上で実行可能な形式のファイル。今回は、汎用的なコンピュータでも利用できるように工夫した。

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