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記者会見東シナ海の水温上昇が梅雨期に九州で起こる集中豪雨の発生に影響―2012年「九州北部豪雨」の事例と今後の水温上昇に伴う将来の見通し―研究成果

本部広報課

記者会見
東シナ海の水温上昇が梅雨期に九州で起こる集中豪雨の発生に影響―2012年「九州北部豪雨」の事例と今後の水温上昇に伴う将来の見通し―

平成26年7月18日

東京大学先端科学技術研究センター

1．会見日時：2014年7月18日（金）14：00～16：00

2．会見場所：東京大学先端科学技術研究センター3号館3階307セミナー室

3．出席者：

中村　尚（東京大学先端科学技術研究センター　教授）

万田敦昌（長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科水産学専攻　准教授）

飯塚　聡（防災科学技術研究所観測・予測研究領域　主任研究員）

西井和晃（東京大学先端科学技術研究センター　助教）

4．発表のポイント

　◆東シナ海の季節的な水温上昇が、九州で梅雨期に起こる集中豪雨の発生時期の重要な決定要因であることを、コンピュータシミュレーションにより明らかにした。

　◆温暖化に伴って今後東シナ海の水温が著しく上昇すると、今世紀末には集中豪雨の発生時期が早まり、雨量も現状よりさらに増大する可能性を示した。

　◆防災・減災の観点、特に将来の地球温暖化に伴う集中豪雨のリスク増大への社会的な適応策を策定する上で極めて意義深い。

5．発表概要

　九州をはじめとする西日本では梅雨末期の7月に集中豪雨がしばしば発生し、河川の氾濫や土砂災害など甚大な被害をもたらす。例えば、九州西部における平年雨量は梅雨最盛期の6月下旬にピークを迎えるものの、日雨量が250mm超える集中豪雨の発生頻度は7月中・下旬が圧倒的に高い。災害史上に残る2012年の「平成24年7月九州北部豪雨」、1982年の｢昭和57年7月豪雨（長崎豪雨）｣、1957年の「諫早豪雨」はいずれもこの時期に起きている。

　東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の万田敦昌准教授らは、このような九州での集中豪雨の発生時期の決定要因として、従来考慮されてこなかった東シナ海の水温が関与する可能性に着目した。そして、2012年の「九州北部豪雨」を再現したコンピュータシミュレーションから、東シナ海の初夏から梅雨末期への著しい水温上昇が集中豪雨の発生時期を決定づける重要な要因であることを見出した。また、地球温暖化に伴って東シナ海の水温が著しく上昇すると、今世紀末には集中豪雨の発生時期が現在よりも早まって「九州北部豪雨」に匹敵する集中豪雨が6月下旬にも起こり得る可能性、さらには7月に発生する集中豪雨では雨量が現状よりもさらに増大する可能性をも示した。

　本成果は、集中豪雨に対する防災・減災の観点、特に将来の地球温暖化に伴う集中豪雨のリスク増大への社会的な適応策を策定する上で極めて意義深い。

6．発表雑誌：「Scientific Reports （英国科学誌Natureの関連誌）」（7月18日掲載）

論文タイトル：Impacts of a warming marginal sea on torrential rainfall organized under the Asian　 summer monsoon

［温暖化する縁辺海がアジアモンスーンによって生じる集中豪雨に及ぼす影響］DOI: 10.1038/srep05741

著者：万田敦昌*　（長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科）

中村　尚*　（東京大学先端科学技術研究センター／海洋研究開発機構）

　　　浅野匠彦　（東京大学大学院理学系研究科 (大学院生)）

飯塚　聡　（防災科学技術研究所観測・予測研究領域）

美山　透　（海洋研究開発機構アプリケーションラボ）

　　　茂木耕作　（海洋研究開発機構大気海洋相互作用研究分野）

　　　吉岡真由美（東北大学大学院理学研究科）

　　　西井和晃　（東京大学先端科学技術研究センター）