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アルツハイマー病に対する光認知症療法の開発に向けて研究成果

 高齢化社会といわれる現在、高齢者認知症の多くを占めるアルツハイマー病(AD)は大きな社会問題となっています。脳内でのアミロイドβペプチド(Aβ)の凝集・蓄積がAD発症の原因であることから、Aβの凝集を抑制すること、また凝集したAβを効率よく除去することがAD根本治療戦略として考えられていますが、未だ根本治療法確立には至っていません。
 そこで、東京大学大学院薬学系研究科機能病態学教室の富田泰輔教授、堀由起子講師、小澤柊太大学院生らと、同大学大学院有機合成化学教室の金井求教授、相馬洋平医薬機能グループリーダー(研究当時)らの研究グループは、日本医療研究開発機構(AMED)戦略的国際脳科学研究推進プログラム 先進的個別研究開発課題の「神経変性疾患治療を目指した光酸素化による細胞内アミロイドの動態制御」(JP20dm0307030)をはじめとする支援のもと、光照射によって活性化する光酸素化触媒を用い、人為的に凝集Aβ選択的に酸素を付加する光酸素化法を開発しました。月齢依存的に脳内にAβが蓄積するADモデルマウスを用いて、生きたマウス脳内で反応を行うin vivo光酸素化反応系を確立してその作用を評価したところ、凝集Aβ選択的な光酸素化は、Aβのさらなる凝集を抑制し、また凝集Aβを脳内から効率的に除去できることを明らかにしました。加えて、光酸素化した凝集Aβの除去においては脳内免疫担当細胞であるミクログリアが関与し、ミクログリア細胞内のリソソーム分解酵素による分解が亢進していることも明らかとなり、除去効果メカニズムの一端も示されました。さらに、アルツハイマー病患者死後脳サンプルを用いて、患者脳内に蓄積したAβに対しても光酸素化が可能であることを示しました。
 本研究成果は、凝集Aβに対する光酸素化法の新規AD根本治療戦略としての可能性を示した点で大変意義のある成果です。また光酸素化触媒はアミロイドに共通の立体構造に対して反応し活性化することから、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症などの、AD以外のアミロイド形成・蓄積を原因とする多くの神経変性疾患に対しても有用である可能性が期待されます。

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