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触媒で分子をチューンアップ ~炭化水素の結合を組み換えて付加価値を高める不斉触媒~ 研究成果

掲載日:2019年1月11日

 有機合成化学教室の魏暁峰 博士(当時、現・University of Zurich、博士研究員)、若木貴行 大学院生、清水洋平 助教(当時、現・北大理、講師)、金井求 教授らは、奈良先端科学技術大学院大学の畑中美穂 特任准教授らのグループと共同で、炭化水素のC-H結合を組み換えてアップグレードする不斉触媒の開発に成功しました。本研究成果は、2019年1月10日付けでChem電子版に掲載されました。


発表概要
 炭素原子と水素原子のみから構成される炭化水素は、燃料としても使われる安価で入手容易な有機分子です。炭化水素には触媒への目印や反応の起点となる酸素原子や窒素原子がないため、化学反応性に乏しく、反応したとしても制御が困難です。実際、炭化水素を原料として医薬品や農薬などの複雑な構造をもつ有機分子を選択的につくる触媒は、これまで非常に限られていました。
 本研究グループは、炭化水素の炭素-水素結合を切断して、同じ分子のなかの元とは別の位置に炭素-水素結合を選択的に移動する触媒を開発しました。炭化水素の結合を組み換える本触媒を用いることで、医薬や農薬といった付加価値の高い分子を合成するために有用なアレンとよばれる分子を高い選択性で合成することができました。さらに、この触媒がどのように化学反応を進めているのかを計算科学を用いて解明しました。
 本研究成果は、安価で豊富な炭素資源を価値の高い分子へと効率的にアップグレードする化学プロセスへの応用が期待されます。

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図1 開発した反応の概念図
入手容易な炭化水素のC=CやC≡Cといった多重結合を目印に、触媒が特定の炭素-水素結合(C-H)を切断し、切り取った水素原子(H)を分子の正しい位置の炭素原子に運ぶことで、医薬品や農薬の合成に有用なキラル有機分子であるアレンが高い効率で合成できた。一方で触媒の設計がうまくいかずに、触媒が切り取った水素原子を間違った位置の炭素原子に運んでしまうと、目的としない分子ができてしまった。


図2  触媒が水素原子を運んでいる様子を計算科学によってシミュレーションした図
今回設計した触媒は、配位子が作る空間の狭さを利用し、間違った場所にHが運ばれるのを防ぐ役割を果たしている。
 

論文情報

Xiao-Feng Wei, Takayuki Wakaki, Taisuke Itoh, Hong-Liang Li, Takayoshi Yoshimura, Aya Miyazaki, Kounosuke Oisaki, Miho Hatanaka,* Yohei Shimizu,* and Motomu Kanai*, "Catalytic, Regio- and Enantio-Selective Proton Migration from Skipped Enynes to Allenes," Chem: 2019年1月11日, doi:10.1016/j.chempr.2018.11.022.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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