PRESS RELEASES

印刷

アミロイド凝集構造に含まれる疎水性ネットワークの正体研究成果

掲載日:2019年7月24日

 薬化学教室の翟 璐晗(ザイ ルーハン)特任研究員と大和田智彦教授らが、アルツハイマー病に関係していると考えられているアミロイドβの凝集構造の起源について計算化学を用いて解析し、今まで認識されていなかった弱い電子相互作用を疎水性領域に発見しました。
 本研究成果は2019年7月24日付でScientific Reportsに掲載されました。

発表概要

 研究グループは、アルツハイマー病に関係していると考えられているアミロイドβの凝集構造の起源について計算化学を用いて解析しました。アミロイドβは40個程度のアミノ酸からなるペプチドで、疎水性アミノ酸を含み凝集しやすいという特徴があります。その凝集構造はβ—シート構造からできています。研究グループの今回の計算研究で、アミロイドβ鎖内で近接する特定の疎水性アミノ酸の原子間にわずかな量ですが電子の蓄積が存在し、弱い相互作用を形成していること(図1)、さらに、アミロイドβが集まってβ—シート構造を作ると、水素結合の他にアミロイド鎖間での相互作用のネットワークが形成されることがわかりました(図2)。このような相互作用がペプチド鎖中の疎水性アミノ酸の側鎖間に見られることが判明しました(図3)。これらの結果は、疎水性相互作用は均一ではなく、方向性を持っているという新しい考え方を提案し、支持しています。病気の原因と考えられるタンパク質の凝集構造の電子構造を研究することで将来凝集を制御する治療薬の創製に役立つことが期待されます。
詳しくはこちら

図1 (a) Amyloidβの凝集構造



図1(b) 1本鎖(chain 1)のamyloidβの分子構造と鎖内の空間横断的なbond path(矢印)



図2.  Amyloidβの凝集構造の部分構造(2本鎖)の分子構造と鎖間(矢印)、鎖内の空間横断的bond pathネットワークの形成



図3  β—ストランド構造を取るロイシンに見られる分子内の空間横断的なbond pathの存在: PPII構造との比較

論文情報

Luhan Zhai, Yuko Otani and Tomohiko Ohwada *, "Uncovering the Networks of Topological Neighborhoods in β-Strand and Amyloid β-Sheet Structures," Scientific Reports: 2019年7月24日, doi:10.1038/s41598-019-47151-2.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる