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植物の根に重力方向を伝える新しい因子の発見 ~ オーキシンを重力側へより多く分配するしくみ 研究成果

掲載日:2020年1月7日

 大学院薬学研究科の平野良憲助教、基礎生物学研究所植物環境応答研究部門の森田(寺尾)美代教授・西村岳志助教、福建農林大学の古谷将彦教授らは植物の重力感受のシグナル伝達に関わる新しい因子RLDを発見しました。本研究の成果は、2020年1月3日に国際学術誌Nature Communications誌に掲載されました。

発表概要

 植物の根は地中に向かって、茎は空に向かって成長します。これは植物が重力の方向を感じ取って行う重力屈性と呼ばれる反応です。重力の方向は根や茎の重力感受細胞と呼ばれる特別な細胞で感知されることや、重力方向に反応した植物の屈性がオーキシンの輸送の制御によって行われることなどが知られていますが、重力感受細胞内での重力方向の情報伝達の仕組みの詳細は不明でした。今回、重力屈性に必要なタンパク質LZYと相互作用するタンパク質としてRLDを新たに発見し、RLDもまた重力屈性に関与する重要な因子であること、およびRLDがオーキシン輸送の制御に関わることを明らかにしました。また、X線結晶構造解析によってLYZとRLDの相互作用機構を原子レベルで明らかにしました。そして、LZYが重力の方向に応答して重力感受細胞内での居場所を変化させ、その時にRLDを結合して同じ場所に連れてくることで、オーキシン輸送を制御するという分子機構を提唱しました。本研究で得られた成果は、重力屈性における重力情報伝達の分子機構の理解を大きく前進させるものです。
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図0. 通常、植物の根は重力の方向を感じ取り、重力の方向に従って伸びる重力屈性を示す(左:野生型)が、rld1 rld4 二重変異体(右)では 、重力屈性が弱く、側根が水平方向に向かう傾向が見られる 。



図1. シロイヌナズナ根の重力屈性反応
上:根端でのコルメラ細胞(重力感受細胞)の位置(赤 )とオーキシンの流れ(緑矢印)。下:重力感受細胞から、器官の偏差成長に至る情報の流れを示した。



図2. シロイヌナズナ側根の伸長方向
野生型に比べて、rld1 rld4 二重変異体、lzy3 変異体では側根が水平方向に向かう傾向にある。


図3.LZYによってRLDは細胞膜へと局在を変える

上:培養細胞をプロトプラスト化し、RLD1とLZY3をそれぞれ単独で発現した。RLD1は細胞質に、LZY3は細胞膜に局在している。下:RLD1とLZY3を同時に発現させると、RLD1はLZY3とともに細胞膜に局在する。

図4.蛋白質複合体構造

左:LZY CCLドメインとRLD BRXドメインの蛋白質複合体結晶
右:CCL−BRX複合体のX線結晶構造

図5.LZY3は重力方向側の細胞膜に局在する

上:若い側根を固定・透明化してLZY3を観察した。刺激前にLZY3は重力側の細胞膜に偏って存在する。180度回転して重力刺激を与え、5分後ではLZY3はまだ元の重力方向にあるが、30分後には新たな重力方向に偏って存在している。下:アミロプラストは5分後にはあまり移動していないが、30分後には新たな重力方向に移動している。*;中央コルメラ細胞、白矢じり;LZY3の極性局在、赤矢じり;アミロプラスト。


図6.側根コルメラ細胞での重力シグナル伝達

論文情報

Masahiko Furutani†, Yoshinori Hirano†, Takeshi Nishimura†, Moritaka Nakamura, Masatoshi Taniguchi, Kanako Suzuki, Ryuichiro Oshida, Chiemi Kondo, Song Sun, Kagayaki Kato, Yoichiro Fukao, Toshio Hakoshima, Miyo Terao Morita † 筆頭著者として等しい貢献度, "Polar recruitment of RLD by LAZY1-like protein during gravity signaling in root branch angle control," Nature Communications: 2020年1月3日, doi:10.1038/s41467-019-13729-7.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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