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細胞は目に見えないフォースを内側から感じる研究成果

掲載日:2021年3月1日

 細胞は、内外の浸透圧差によって強制的に体積を変化させられるストレス(=浸透圧ストレス)に常に曝されており、浸透圧変化を感知して適切に応答することで体積を一定に保っています。これまでは細胞外環境と接する細胞膜上の変化などを介して物理的実体のない浸透圧変化を感知するという考え方に基づいた研究が主流でした。
 東京大学大学院薬学系研究科の渡邊謙吾特任助教(研究当時)らの研究グループは、ASK3というタンパク質を研究モデルに分子生物学・生化学的手法と計算機シミュレーションを用いて、細胞が液―液相分離という物理現象を「引き金」として浸透圧ストレスを細胞内部で感知していることを解明しました。
 本研究はいわゆる基礎研究に相当しますが、本研究成果によってASK3の役割から期待される高血圧疾患や浮腫などに対する新規治療薬の開発に向けて前進しました。さらに本研究成果によって得られた知見を活かして液―液相分離を積極的に操作することで、神経変性疾患など多くの疾患に対する新規治療戦略の開発に発展することも期待されます。
 本成果は、2021年3月1日(英国時間)に、英国の科学雑誌「Nature Communications」の電子版に公開されました。なお本研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業(基盤研究(A) JP18H03995、基盤研究(B) JP18H02569、若手研究 JP19K16067)や日本医療研究開発機構の基盤研究事業(老化メカニズムの解明・制御プロジェクト JP20gm5010001)などの助成を受けて行われました。
 
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論文情報

Kengo Watanabe*, Kazuhiro Morishita, Xiangyu Zhou, Shigeru Shiizaki, Yasuo Uchiyama, Masato Koike, Isao Naguro, Hidenori Ichijo*, "Cells recognize osmotic stress through liquid–liquid phase separation lubricated with poly(ADP-ribose)," Nature Communications: 2021年3月1日, doi:https://doi.org/10.1038/s41467-021-21614-5.

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