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有機合成の難題である複雑な反応の機械学習・データ駆動型触媒設計による制御 有機合成DX化による物質科学の変革に道 研究成果

掲載日:2021年12月6日

 日本学術振興会科学研究費助成事業の新学術領域研究「ハイブリッド触媒」において、東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授、三ツ沼治信特任助教と理化学研究所環境資源科学研究センターの山口滋上級研究員と北海道大学の清水洋平准教授らのグループは、有機合成の課題の一つである触媒的立体分岐型不斉合成の機械学習・データ駆動型触媒設計による制御に成功しました。
 人工知能・データ科学は分析手法としての側面を持ちます。これまでも分子の構造・性質をより深く知るための新たな分析手法の出現は、分子科学研究のあり方を一変させてきました。データ科学により有機合成の難題である複雑な触媒反応の制御を実現できれば、有機合成・触媒化学研究に変革をもたらす可能性があります。
 本研究チームは、立体分岐型カルボン酸α位不斉アリル化反応において、全ての立体異性体を選択的に作り分ける触媒のデータ駆動による構造最適化を目指しました。基質と触媒の組み合わせによるスクリーニングで集めた数十の反応を用いてデータ解析を行い、反応選択性の支配因子に関する情報を抽出・可視化しました。可視化した情報を基に設計した二種類の触媒は、人間の直感に基づく試行錯誤のみでは困難であった複数の選択性の完全制御を実現し、連続不斉中心を持つカルボン酸のすべての異性体を入手可能とすることに成功しました。
 データ駆動科学により有機合成の難題である複雑な触媒反応が制御可能であることを示した本研究は、有機合成DX化による物質科学変革への道筋の一例を示したと言えます。

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論文情報

Hongyu Chen, Shigeru Yamaguchi*, Yuya Morita, Hiroyasu Nakao, Xiangning Zhai, Yohei Shimizu, Harunobu Mitsunuma*, Motomu Kanai*, "Data-Driven Catalyst Optimization for Stereodivergent Asymmetric Synthesis of -Allyl Carboxylic Acids by Iridium/Boron Hybrid Catalysis," Cell Reports Physical Science: 2021年12月6日, doi:10.1016/j.xcrp.2021.100679.
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