新奇トリテルペン生合成経路を発見研究成果
掲載日:2022年6月2日
テルペノイド化合物は、知られているだけで80,000以上の分子が単離されている天然物の一群であり、生物活性を持つ化合物が数多く含まれることから、医薬品候補化合物の探索ソースとしても非常に重要な化合物群の一つです。その中でも、炭素鎖数30(C30)のトリテルペンは、微生物、植物、動物に普遍的に見いだされ、細胞膜の重要な構成成分の一つであり、生物の生理機能を調節するステロイド化合物の前駆体などが含まれます。これまでに、トリテルペンの生合成経路としては、炭素鎖数15(C15)のファルネシル二リン酸(FPP)が2量化して生成するスクアレンを経由した経路しか知られていませんでした。
今回、東京大学大学院薬学系研究科の阿部郁朗教授と森 貴裕助教、Hui Tao特任研究員、および、高エネルギー加速器研究機構の千田俊哉教授と安達成彦特任准教授、武漢大学のTiangang Liu教授、ボン大学のJeroen Dickschat教授らの共同研究グループは、カビ由来テルペン合成酵素の機能解析を行い、スクアレンに由来せずに、C5 イソプレン単位ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)とイソペンテニル二リン酸(IPP)を基質として、C30トリテルペンの骨格を一挙に構築する、画期的な新奇生合成酵素を世界に先駆けて発見しました。
さらに、共同研究グループは、安定同位体を使用した酵素反応機構の精密解析や、酵素のX線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析、さらには立体構造をもとにした部位特異的変異導入により、2種類のトリテルペン合成酵素の反応機構の詳細を明らかにすることに成功しました。本成果は既存の常識を覆す新たな生合成経路と画期的な新奇酵素の発見であり、新しい分子認識化学の開拓や新たな触媒概念の確立など、学術的に大きなインパクトを与えるとともに、今後、合成生物学の手法を用いた生合成マシナリーの再設計により、天然を超える新規機能分子の創製など、創薬研究に幅広く貢献することが期待されます。
詳しくはこちら
今回、東京大学大学院薬学系研究科の阿部郁朗教授と森 貴裕助教、Hui Tao特任研究員、および、高エネルギー加速器研究機構の千田俊哉教授と安達成彦特任准教授、武漢大学のTiangang Liu教授、ボン大学のJeroen Dickschat教授らの共同研究グループは、カビ由来テルペン合成酵素の機能解析を行い、スクアレンに由来せずに、C5 イソプレン単位ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)とイソペンテニル二リン酸(IPP)を基質として、C30トリテルペンの骨格を一挙に構築する、画期的な新奇生合成酵素を世界に先駆けて発見しました。
さらに、共同研究グループは、安定同位体を使用した酵素反応機構の精密解析や、酵素のX線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析、さらには立体構造をもとにした部位特異的変異導入により、2種類のトリテルペン合成酵素の反応機構の詳細を明らかにすることに成功しました。本成果は既存の常識を覆す新たな生合成経路と画期的な新奇酵素の発見であり、新しい分子認識化学の開拓や新たな触媒概念の確立など、学術的に大きなインパクトを与えるとともに、今後、合成生物学の手法を用いた生合成マシナリーの再設計により、天然を超える新規機能分子の創製など、創薬研究に幅広く貢献することが期待されます。
詳しくはこちら
論文情報
Hui Tao#, Lukas Lauterbach#, Guangkai Bian#, Rong Chen#, Anwei Hou#, Takahiro Mori#, Shu Cheng, Ben Hu, Li Lu, Xin Mu, Min Li, Naruhiko Adachi, Masato Kawasaki, Toshio Moriya, Toshiya Senda, Xinghuan Wang, Zixin Deng, Ikuro Abe*, Jeroen S. Dickschat*, Tiangang Liu*(#共同筆頭著者、*共同責任著者), " Discovery of non-squalene triterpenes," Nature: 2022年6月1日, doi:10.1038/s41586-022-04773-3.
論文へのリンク (掲載誌)