PRESS RELEASES

印刷

チロシンを選択的にリン酸化する化学触媒法(STAR 反応)を開発 チロシンキナーゼ酵素の機能代替への道 研究成果

掲載日:2025年2月12日

 東京大学大学院薬学系研究科 金井 求 教授らの研究グループは、生物触媒(酵素)チロシンキナーゼの機能を代替する化学触媒法の開発に成功しました。
 ペプチドやタンパク質を構成するアミノ酸の一種であるチロシンのリン酸化は、ホルモンや成長因子といった細胞外の情報を細胞内に伝え、遺伝子の発現などを介して、外界の情報に対して細胞が適切に応答をするために重要な働きを担っている化学反応です。生体内ではこの化学反応を、チロシンキナーゼとよばれる酵素が触媒しています。チロシンキナーゼは、チロシン以外にリン酸化を受ける可能性があるセリンやスレオニンといったアミノ酸が存在していても、チロシンを選択的にリン酸化します。この選択性は、細胞が外界の情報に対して適切に応答するために極めて重要です。一方でこのような選択性を化学触媒で発現することは、非常に困難でした。
 本研究では、タンパク質を構成するアミノ酸の中でチロシンが最も酸化を受けやすいものの一つであることに着目して、光のエネルギーを吸収して活性化される光触媒を用いてチロシンからラジカルを選択的に生成することを開始段階とした、チロシン選択的なリン酸化反応(STAR反応)を開発しました。この反応は、水を含む溶媒中や、セリンやスレオニンなど反応しうる複数の部分構造を有するペプチドに対しても、効率的に進行しました。
 本研究の成果は、チロシンキナーゼの働きを化学触媒が代替・補完して、細胞の応答や運命を化学的に操作する技術や疾患を治療する新創薬コンセプト「触媒医療」の実現に貢献することが期待されます。

論文情報

Benjamin D. A. Shennan, Tomoyuki Fukuta, Mina Yamane, Takashi Koyama, Harunobu Mitsunuma, Motomu Kanai*, "Catalytic Phosphorylation of Tyrosine via a Radical Arbuzov Reaction," Journal of the American Chemical Society: 2025年2月11日, doi:10.1021/jacs.4c17637.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる