大事な物質を維持するための“隠れた消費抑制機構” 見かけの安定に潜む代謝産物制御メカニズムの解明 研究成果

東京大学大学院薬学系研究科の樫尾宗志朗 助教(研究当時)と三浦正幸 教授(研究当時)は、栄養不足や代謝産物の産生阻害といった厳しい環境下でも、生命維持に不可欠な代謝物質「S-アデノシルメチオニン(SAM)」の量を安定して保つ仕組みを明らかにしました。
生体分子の変化を網羅的に捉える近年の生命科学において、重要だからこそ安定している「見かけ上変化がない因子」は、見落とされがちです。本研究では、飢餓状態においても安定に存在するSAMに着目しました。ショウジョウバエの脂肪体(哺乳類の肝臓や脂肪組織に相当)を用い、プロテオミクスやRNAiスクリーニングによる解析を行った結果、SAMを消費する酵素グリシンN-メチルトランスフェラーゼ(Gnmt)が、飢餓時に細胞核内のユビキチン・プロテアソームシステム(UPS)で分解されることを発見しました。これによりSAMの過剰消費が抑えられ、代謝の恒常性が維持されていることが分かりました。
本研究成果は、SAM代謝の生体制御、代謝破綻が関与する老化やがん、栄養障害の理解を深め、新たな治療法の探索基盤となることが期待されます。
生体分子の変化を網羅的に捉える近年の生命科学において、重要だからこそ安定している「見かけ上変化がない因子」は、見落とされがちです。本研究では、飢餓状態においても安定に存在するSAMに着目しました。ショウジョウバエの脂肪体(哺乳類の肝臓や脂肪組織に相当)を用い、プロテオミクスやRNAiスクリーニングによる解析を行った結果、SAMを消費する酵素グリシンN-メチルトランスフェラーゼ(Gnmt)が、飢餓時に細胞核内のユビキチン・プロテアソームシステム(UPS)で分解されることを発見しました。これによりSAMの過剰消費が抑えられ、代謝の恒常性が維持されていることが分かりました。
本研究成果は、SAM代謝の生体制御、代謝破綻が関与する老化やがん、栄養障害の理解を深め、新たな治療法の探索基盤となることが期待されます。
論文情報
Soshiro Kashio, Masayuki Miura, "S-adenosylmethionine metabolism buffering is regulated by a decrease in glycine N-methyltransferase via the nuclear ubiquitin–proteasome system," Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS): 2025年6月24日, doi:10.1073/pnas.2417821122.
論文へのリンク (掲載誌)