金を作る天然物の謎を解明 デルフチバクチンAの完全構造決定と金イオン還元機構解明 研究成果

東京大学大学院薬学系研究科の竹内碧大学院生(研究当時)、柿澤大夢大学院生、澤田瑞希大学院生、森田航輔学部生、伊藤寛晃准教授、井上将行教授の研究グループは、東京農工大学の野口恵一教授との共同研究により、金塊表面に生息するバクテリアが生産し、有毒な金イオンを単体の金へと速やかに還元して無毒化する天然物デルフチバクチンAの完全な構造を世界で初めて決定し、金イオンの還元メカニズムを明らかにしました。デルフチバクチンAは金をナノ粒子として形成する生体由来分子として2013年に報告されて以来、多くの研究者の興味を集めてきましたが、発見から12年を経てもなお一部の立体化学の情報は不明のままでした。本研究ではデルフチバクチンAとして可能性をもつ全てのジアステレオ異性体の迅速合成を実現し、データ解析によってデルフチバクチンAの完全な構造を初めて決定しました。また、合成した全てのジアステレオ異性体の水溶液中における金イオン還元速度を比較し、デルフチバクチンAの金ナノ粒子形成メカニズムを明らかにしました。
本成果は、デルフチバクチンAが細菌の進化の過程で金イオンの還元に立体化学まで含めて最適化された構造をもつことを示唆します。また、本天然物が有毒な金イオンの除去や、多様な形状をもつ金ナノ粒子を形成するための新たな構造基盤として活用可能となることが期待できます。
本成果は、デルフチバクチンAが細菌の進化の過程で金イオンの還元に立体化学まで含めて最適化された構造をもつことを示唆します。また、本天然物が有毒な金イオンの除去や、多様な形状をもつ金ナノ粒子を形成するための新たな構造基盤として活用可能となることが期待できます。
論文情報
Aoi Takeuchi, Hiromu Kakizawa, Mizuki Sawada, Kosuke Morita, Keiichi Noguchi, Hiroaki Itoh, Masayuki Inoue*, "Complete Structure of Delftibactin A and Its Function in Reductive Formation of Gold Nanoparticles," Journal of the American Chemical Society: 2025年7月17日, doi:10.1021/jacs.5c05308.
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