抗ウイルス活性を有する複雑天然物の世界初の完全化学合成 トリゴチェリンAおよびCの全合成 研究成果
トリゴチェリンAおよびCはトウダイグサ科の絶滅危惧植物から単離された天然物です。本天然物は5/7/6員環(ABC環)が縮環した炭素骨格上に、11個の連続する不斉炭素と9個の酸素官能基および2個の塩素原子が密集した化学構造を有します。さらに、6員環に存在する特異なかご形構造によって、複雑な3次元構造を形成しています。トリゴチェリンAとCはアシルの構造のみが異なります。トリゴチェリンAはデング熱やチクングニア熱といった「顧みられない熱帯病」の原因ウイルスに対して選択毒性を示しますが、絶滅危惧植物からの単離収率が極めて低く(0.00033%)、天然からの供給が困難なため、創薬研究への応用には化学合成が必須です。しかし、トリゴチェリン類のような複雑な化学構造を有する天然物を有機合成化学的に組み上げることは困難であり、実際に全合成はこれまで報告されていませんでした。
今回、東京大学大学院薬学系研究科の高岡恭兵 大学院生、松原暖 大学院生、松本真那果 大学院生(研究当時)、長友優典 講師(研究当時)、萩原浩一 助教、井上将行 教授の研究グループは、3つの部分構造(フラグメント)を段階的に連結させる複雑分子構築戦略によって、天然からわずかしか得られないトリゴチェリンAおよびCの世界初の全合を37の最長直線工程で達成しました。
今回本研究グループが達成した全合成は、複雑天然物合成に対する、ラジカル反応を基盤としたフラグメント連結を経る炭素骨構築戦略の有効性を実証しました。また、構造中の塩素原子や複数の炭素–炭素二重結合を損なわない合理的な酸素官能基導入法は、トリゴチェリン類およびその類縁天然物にとどまらず、他の多くの複雑天然物の全合成へと応用展開可能です。さらには、本化合物をはじめとする複雑天然物を基盤とした創薬研究を加速することが期待できます。
今回、東京大学大学院薬学系研究科の高岡恭兵 大学院生、松原暖 大学院生、松本真那果 大学院生(研究当時)、長友優典 講師(研究当時)、萩原浩一 助教、井上将行 教授の研究グループは、3つの部分構造(フラグメント)を段階的に連結させる複雑分子構築戦略によって、天然からわずかしか得られないトリゴチェリンAおよびCの世界初の全合を37の最長直線工程で達成しました。
今回本研究グループが達成した全合成は、複雑天然物合成に対する、ラジカル反応を基盤としたフラグメント連結を経る炭素骨構築戦略の有効性を実証しました。また、構造中の塩素原子や複数の炭素–炭素二重結合を損なわない合理的な酸素官能基導入法は、トリゴチェリン類およびその類縁天然物にとどまらず、他の多くの複雑天然物の全合成へと応用展開可能です。さらには、本化合物をはじめとする複雑天然物を基盤とした創薬研究を加速することが期待できます。
論文情報
Kyohei Takaoka, Dan Matsubara, Manaka Matsumoto, Masanori Nagatomo, Koichi Hagiwara, and Masayuki Inoue*, "Total Synthesis of Trigocherrins A and C," Journal of the American Chemical Society: 2025年11月25日, doi:10.1021/jacs.5c17272.
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