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脂肪酸を「重く」する方法の開発 ―脂肪酸の選択的重水素化法の開発と酸化脂肪酸の代謝過程の解明― 研究成果

掲載日:2022年4月28日

 計測技術の発達に伴って、我々の体では新たな脂質が次々と発見されています。そして、それぞれの脂質が、体の中でどのような化学反応を受けるかという過程(代謝過程)を追跡することは、その脂質の役割を解明するうえで大変重要です。代謝過程を追跡するための1つの方法として、目的の脂質に成り代わって代謝される脂質を人工的に作製し、分子プローブとして細胞や生体に取り込ませる実験を行います。しかし、次々に見つかる新しい脂質それぞれの分子プローブを安価で簡便に合成できる方法はこれまで限られていました。
 今回、東京大学大学院薬学系研究科附属ワンストップ創薬共用ファシリティセンター 滝田 良 准教授、帝京大学薬学部物理薬剤学研究室 濱 弘太郎 准教授らの研究グループは、安価で取扱容易な重水素源と触媒・試薬を用いて脂肪酸の特定の位置に決まった数の重水素を導入し、重水素で標識した脂肪酸を簡便に合成する方法を開発しました。さらに本方法を用いて合成した重水素化脂肪酸を利用して、血小板が作り出す酸化脂肪酸が、リン脂質の一部として取り込まれる機構を明らかにしました。本成果を基に、重水素化脂肪酸のライブラリーを構築することにより、それぞれの脂質の代謝過程を明らかにするための強力なツールを提供できることが期待されます。

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論文情報

Ayako Watanabe+, Kotaro Hama*,+, Kohei Watanabe, Yuko Fujiwara, Kazuaki Yokoyama, Shigeo Murata, and Ryo Takita* (* : Corresponding authors, + : Equally contributed), "Controlled Tetradeuteration of Straight-Chain Fatty Acids: Synthesis, Application, and Insight into the Metabolism of Oxidized Linoleic Acid," 「Angewandte Chemie International Edition」(オンライン版:4月27日), doi:10.1002/anie.202202779.
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