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迷走神経は情動を形成するための脳活動と連動する 治療抵抗性のうつ病などに対する新規治療法開発への貢献に期待 研究成果

掲載日:2024年1月9日

 長い間、情動は脳によってつくられると考えられてきました。しかし最近の研究では、情動は脳だけでなく、様々な内臓の状態にも影響を受けることがわかっています。中でも、身体を走行する迷走神経が重要であると考えられますが、その詳細な生理メカニズムは不明でした。
 東北大学大学院薬学研究科の佐々木拓哉教授と、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授らの研究グループは、マウスにおいて、迷走神経と、情動に重要な脳の前頭前皮質および扁桃体の活動がどのように関連するか解析しました。健常なマウスでは、迷走神経の活動に対応して、不安の増減と共に変動するような前頭前皮質と扁桃体で見られる脳波パターンの強弱が明確に連動することがわかりました。しかし、精神的なストレスを負荷してうつ様状態になったマウスでは、このような連動が観察されなくなりました。こうした病態生理変化は、迷走神経の電気刺激により、回復することが確認されました。
 本研究成果は、私たちのこころの状態を正確に理解するために、脳だけでなく、迷走神経に着目することが重要であることを示唆します。このような考え方は、臨床研究において最近着目されている迷走神経刺激の治療法についても、新しい脳メカニズムを考察する契機となります。この成果は、2024年1月9日(火)午後6時(日本時間) に科学誌Nature Communicationsに掲載されました。

論文情報

Toya Okonogi*, Nahoko Kuga, Musashi Yamakawa, Tasuku Kayama, Yuji Ikegaya, Takuya Sasaki**., "Stress-induced vagal activity influences anxiety-relevant prefrontal and amygdala neuronal oscillations in male mice," Nature Communications: 2024年1月9日, doi:10.1038/s41467-023-44205-y.

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